ジャガイモ品種「サクラフブキ」(SAKURAFUBUKI)

(1)来 歴
 昭和58年に道立根釧農試において高澱粉、Yウイルス抵抗性の「コナフブキ」を母に、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性の「トヨアカリ」を父として交配し、選抜を加え、平成6年に奨励品種となったものです。
 名は、澱粉収量が多く、育成地のある中標津町桜ケ丘を示しています。
当初登録品種で最初の漢字「粉無双」を使った品種として関心をもたれましたが、翌平成7年9月「サクラフブキ」も変更されました。
 地方番号は「根育26号」、登録番号は「農林34号」です。北海道内一円に適します。
(2)地上部特性
 初期生育は「コナフブキ」並で、「紅丸」や「アスタルテ」より遅い。
草姿は中間型で、茎長は「紅丸」よりも長く、後期によく繁茂します。茎がやや太く、分枝は「紅丸」、「コナフブキ」より多い。小葉の着生は「紅丸」より疎で、「コナフブキ」並、大きさは「紅丸」よりやや小さく、形は「コナフブキ」に似て細い。
 花は「コナフブキ」よりもかなり遅れて咲きはじめ、花色は「コナフブキ」よりやや濃い赤紫系で、花弁の先端は裏も白い。がくの色は「紅丸」同様に赤紫をおびていますので、「コナフブキ」(緑)と区別できます。結果数は「コナフブキ」並に多い。
枯凋期は、「ベニマル」や「アスタルテ」より遅く、現品種の中で最も晩生です。
(3)地下部特性
塊茎の形は偏球、皮色は「コナフブキ」並の黄褐、目は「コナフブキ」並で「トヨアカリ」より淡い淡赤色をしています。表皮は「紅丸」や「コナフブキ」同様にやや粗です。目の深さは「コナフブキ」よりやや深く、「紅丸」並の中に属します。肉色は白です。
いも数はあまり多くはないが、大きさは「コナフブキ」より大きく、「紅丸」程度です。上いも重は「コナフブキ」並、澱粉価は「コナフブキ」よりも高く、澱粉収量は熟期の遅い分だけ多いめです。
 ジャガイモシストセンチュウに抵抗性があり(H1)、疫病抵抗性手働遺伝子R1を持っており、塊茎腐敗にはやや強い。青枯病には弱い。
 そうか病には一般品種並に弱いが、粉状そうか病には強い。
 褐色心腐、中心空洞の発生は「コナフブキ」並の微です。二次生長は「コナフブキ」より少なめです。
 塊茎の休眠期間は「コナフブキ」並のやや長に属します。
(4)でん粉特性

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澱粉糊化時の温度と粘度、右は品種の離水率(共に、山本原図)
灰分含有およびりん含有は「紅丸」より多く、「コナフブキ」より少ない。
 平均粒径は「コナフブキ」より大きく、「アスタルテ」よりわずかに小さく、「紅丸」並です。糊化開始温度は「紅丸」よりやや高く、「コナフブキ」並です。最高粘度は「コナフブキ」並で、「紅丸」より高い。最高粘度時温度は「紅丸」や「コナフブキ」に比べると高く、りん含有が高いという欠陥があります。ブレーク・ダウンは「紅丸」及び「コナフブキ」より小さい。ゲル破壊強度は「紅丸」よりやや小さく「コナフブキ」並で、破壊時歪は「紅丸」および「コナフブキ」より小さい。最大の欠点は、温度を上げていってもなかなか最高の粘りを出さず、温度が75℃を越えることであり(左図)、こうなるとカマボコ、ソーセイジなどの肉への影響が大きくなるなど、このでん粉を好むユーザーがいないことにあります。また塩分を使ったカマボコで問題となる離水率が高いという欠点もあります。(右図)
(5)栽培上の注意
初期生育及び塊茎形成が遅く、早期肥大性がやや劣るので、浴光催芽によって生育を促進図るのがよい。早掘りでは「コナフブキ」より劣ります。
疫病抵抗性はやや強いが、防除回数を少なくできるほどではありません。
本品種の栽培により、「アスタルテ」同様ジャガイモシストセンチュウの密度は約10分の2に低下し、その効果はえん麦「サイヤー」などの栽培より高い。他の線虫抵抗性品種同様に、採種栽培は線虫のいない圃場で行う必要があります。
 黒斑病*にかかったことがあるので、秋の打撲、水ぬらし、を少なくする。
*) 黒斑病(写真78)
 

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「サクラフブキ」(コナフブキよりやや濃い淡赤紫色系)の花。
「サクラフブキ」(左)と「紅丸」(紅色)の塊茎【根釧農試原図】


コナフブキ澱粉との比較(1999.6)

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