341.『ルパン三世 カリオストロの城』
1979年、邦画。監督:宮崎駿。
1968年。怪盗ルパン三世一味はモナコの国営カジノの大金庫から大金を盗み出す。しかしそれが偽札「ゴート札」であることに気づきルパンと次元は、偽札出処と疑われているヨーロッパのカリオストロ公国に向かう。
入国したルパンは、追われているクラリスにあう。クラリスは、父にかわって国を治めているカリオストロ伯爵に結婚を迫られたため逃げ出したのだ。クラリスはかって重傷を負わされたルパンを助けてくれた幼女であった。伯爵は、クラリスの逃亡を手助けしたルパンらに暗殺集団を差し向ける。伯爵のねらいは先祖の財宝であり、その鍵である指輪を持っているクラリスを得たいのであった。
暗殺集団の手を逃れたルパンは五右ェ門を呼び寄せるとともに、彼の逮捕に執念を燃やす国際警察の銭形警部がクラリスが監禁されている伯爵の城へ来るように仕向け、城内で銭形に変装して衛士隊を欺いて内部に潜入する。先に城に使用人として入り込んでいた不二子からクラリスの居場所を聞き出したルパンはクラリスと対面するが、伯爵に見つかり地下牢獄へ通じる穴に落とされてしまう。 ルパンは地下牢獄で先に落とし穴に落ちていた銭形と再会し、協力して地下牢獄から脱出する。
その際地下にある偽札工場を発見し、銭形は国際警察に出動を要請するが、高度な政治問題として、その対応は各国に留め置くことにされる。ルパンが怪我での3日の昏睡の翌日、クラリスと伯爵の結婚式に忍び込んで奇襲を仕掛け、その混乱に乗じてクラリスを救出するが、逃げ込んだ時計塔で再び伯爵にクラリスを奪われてしまう。ルパンは時計塔を見て気付いた指輪の謎を伯爵に教え、それと引き換えにクラリスを無傷で引き渡すよう要求するが。伯爵はだまし、クラリスを足蹴にして湖へと叩き落とす。ルパンは後を追って宙に身を投げ、クラリスを抱きとめながら共に湖へと落ちて行く。 文字盤のヤギの目に指輪を納めた途端に時計塔が急速に動き始める。指輪は沈んだ遺跡を表出させる起動装置であったのだ。クラリスの心を盗んだルパンと銭形たちの車は、追いつ追われつしながら地平線へと消えていくのだった。
映画のなかで、何度かフランスの国民車“シトロエン2CV”が出てくる。これは宮崎駿監督が熱愛している車である。この車はフランスの“農民車”として構想され、「木靴をはいた農夫が2人と50kgのジャガイモ、もしくはワイン樽を積んで、60km/hで走れること。空冷で軽く、燃費は3リッター/100km。悪路を走っても、籠いっぱいの卵が一個も割れないこと」だった。
342.『西村京太郎トラベルミステリー72 十津川警部のラストラン』
343.『ミッドサマー』 (原題:『Midsommar(夏至祭)
344.『バルトの楽園(がくえん)』 (独題:Ode an die Freude)
345.『X-MEN:アポカリプス』 (原題:X-MEN:Apocalypse)
346.『マイ・ブラザー(うちの兄貴)』 (英題:My Brother)
347.『県庁の星』
348.『花のあとさき ムツばあさんの歩いた道』
349.『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』
350.『クーパー家の晩餐会(ばんさんかい)』 (原題:Love the Coopers)
註)成形ポテトチップ(Fabricated Chips)
2020年、テレビドラマ・邦画。督:村川 透。
大学教授・大島健蔵(久松信美)が都内の路地で何者かに刺殺された。警視庁捜査一課・十津川警部(高橋英樹)と亀井刑事(高田純次)が現場に行く。第一発見者によると、被害者は「十津川...」と言い残して息を引き取ったという。大島は細胞中のDNAのあるミトコンドリア研究で知られた人物である。現場付近の防犯カメラに不審な男の姿として、時おり研究所にジャガイモなどの野菜を持ち込んでいる(写真)農民育種家赤池庄五郎(松尾諭)が映っていた。
彼は、准教授・早瀬由美(黒谷友香)や研究を支援していたバイオ関連会社社長・中園宏司(中村俊介)と北海道の新十津川町での同級生であり、3人は永遠の友情を誓い、同じキーホルダーを持っていた。赤池を大島に紹介したのは早瀬であったが、大島は彼の取り組みを“小学生の自由研究レベル“と蔑んでいた。
その後、故郷へと逃亡した?赤池の足取りを追って、十津川と亀井も新十津川町へ。ところが、なんと赤池は猟銃を手に町役場に侵入、町の資産家らを人質に取って立てこもる。「札沼線廃止を撤回しろ!」と無茶な要求を叫ぶ。はたして赤池の真意は…!?
【付記】多くのファンが見届けようとしたラストランであったが、新型コロナウイルス感染被害を避けるため、予定より早められ2020年4月16日に行われた。
2020年、アメリカ映画。監督:アリ・アリスタ−。
女子学生のダニー(フローレンス・ピュ−)には、躁鬱病の妹がいたが、両親を巻き添えに無理心中する。このため大学院生のボーイフレンド・クリスチャン(ジャック・レイナー)は別れ話しを切り出せない。元気づけようとクリスチャンはダニーをパーティへ誘う。そこで、ダニーは、クリスチャンがジョッシュら男友達だけでスウェーデンへ旅行する計画をしていたことを知る。罪悪感を覚えたクリスチャンはダニーも旅へ誘う。スウェーデンから来た留学生・ペレの故郷で90年に1度しか開催されない伝統的行事夏至祭へ参加することになる。
しかしそこは豊かとは言えない村の祭りであった。そして学生たちは何も知らずに恐怖体験に巻き込まれていく。実はこの映画はスウェーデンを舞台に不可解な宗教儀式を描いたホラー映画なのだ。
現在のスウェーデンの夏至祭(ミッドソンマル)は白夜の続く毎年6月19日から26日の間の、夏至に最も近い土曜日とその前日と合わせて2日間てあり、移動祝日になる。広場にマイストングと呼ばれる柱を立てることから始まる。5月をMaj(マイ)と呼ぶが、マイストングの「マイ」は5月という意味ではなく、白樺の葉で飾ったものを言う。踊りに疲れると、食事の時間となり、スナップスやヌッベという蒸留酒やチャイブを刻んだサワークリームなどを飲む。この祭りの食事に欠かせないのが新ジャガであり、このために栽培する家庭も多い。ジャガイモは皮付きの丸のままディルという香草とともに茹でて、ニシンの塩漬けとサワークリームとかニシンの酢漬けが多いが、サーモンやスペアリブも出たりかる。デザートはイチゴと決まっており、イチゴと生クリームで食べたり、イチゴのケーキを食べたりする。
2006年、邦画。監督:出目昌伸。
第一次世界大戦のとき日本は日英同盟を結び、1914(大正3)年中国の租借地青島(チンタオ)にいたドイツ軍を攻撃し、そこで降伏したドイツ兵約5000人を捕虜とする。そのうち939人を収容した徳島県鳴門市の板東俘虜収容所が映画の舞台である。所長松江豊寿を松平健、その妻歌子を高島礼子が務めた。
当時の日本の食生活は貧弱なため、ドイツ兵にとっては苛酷であり、所内の厳しい規則が捕虜に不信と反感を募らせていた。松江は、「ドイツ人は犯罪者ではなく、祖国のために戦った愛国者なのだから、帰国するまでは人道的に守ってやらねばならぬ」という信念のもと人道的に扱うことを心がけ、地元住民との交流も監視つきで許した。俘虜のなかにはドイツ軍の青島総督でバルト(Bart 、ひげ)をはやしたクルト・ハインリッヒ(ブルーノ・ガンツ:「ヒトラー 最後の12日間」にも出演)もおり、松江は敬意をもって接し、総督も毅然とした態度を崩すことはなかった。
捕虜の高い技術を生かして建物の修理、生活用品の改善を認め、やがて収容所内には肉屋、製パン所ができ、収容所新聞も発行され、彼らの好きなジャガイモを栽培できるようになり、収穫したジャガイモで「チューリンゲン地方の団子」を食べたという記録もある。
近くの住民も、チーズやバターの作り方、ドイツの印刷術、パンの焼き方などを習得したり、バイオリンを教わることもあった。洪水に悩む人々のため現存する石造のドイツ橋やめがね橋を完成させ、徳島の人々の産業や文化に大きく役立つことになる。軍楽隊がそのまま捕虜になっており、映画最後の霊山寺でのドイツ兵によるベートーベンの『交響曲第9番 歓喜の歌』合唱シーンでは観客を泣かせたが、この1967(大正6)年6月10日の公開演奏は、日本での最初のものであり、以後年末などにはよく聞くことになる。
2016年、アメリカ映画。監督:ブライアン・シンガー。
人気の高い長編アクション・コミックを映画化したもの。紀元前3600年、最強のミュータントであるアポカリプスはその強大な能力によって人々から崇拝され、古代エジプトを支配していた。彼は自分が老いると他のミュータントの体に自分の魂を移して長い間生き長らえてきた。しかしヒーリング・ファクターの能力をもつミュータントの体に魂を移す儀式を行おうとしたところ、彼に反感を持つ者たちの反乱に遭い、4人の従者が命を投げうって彼を守るものの彼はピラミッドに生き埋めになり、長い間の眠りにつくこととなった。1983年にあるカルト集団が蘇えさせてしまう。マーベルヒーローたちのX-MENチームが立ち向かう姿を描くもの。
映画は過去・未来を飛び回るがジャガイモは出てこない。筆者がここで取り上げたのはここに出てくるセクシーくのいちサイロックを務めたアメリカの女優リサ・オリヴィア・マン(Lisa Olivia Munn, 1980年〜 )についてふれたいためである。彼女は子供のころ日本で育ちモデルとして活躍したこともある。あるテレビの特集で山梨県棡原村(ゆずりはらむら)(現上野原市)の住民たちを描いていたが、そこではガンなどの疾病にかかる人が少なく、長寿者が多く、年を取っても肌がツヤツヤでシワの数も少ないことを知り、ストレス少なくジャガイモなどの野菜を多くとる生活の結果ではないかと知り、実践してみたと言う。その結果を35歳のころ(2016年)、1年前の写真と並べてインスタグラムに写真をアップして、見た目の変化に貢献したもののひとつに日本のジャガイモがあると書き込んでいた。すなわち、眉の形を変え、シミを薄くする化粧品を使い続け、顔のシワの予防対策にヒアルロン酸が豊富な日本のジャガイモを食べ続けている、と。ただし揚げるのはよくないとも言っているが、産地や品種名、どのような形態で入手したのかなど知りたいところである。
2004年、韓国映画。監督:アン・クォンテ。
キム・ソンヒョン(シン・ハギュン)は生まれながらの兎唇(みつくち)だった。写真好きの父親は病気と心労で他界。その後すぐ弟のキム・ジョンヒョン(ウォンビン)が生まれる。しかし母(キム・ヘスク)は可哀想な兄ばかり可愛がって育てた。弟はハンサムで喧嘩に強いが、母の愛に飢え、そのせいで兄弟仲は悪かった。兄ソンヒョンの友達は知恵遅れで皆にバカにされているトゥシクだけだった。二人が遊んでると皆に笑われた。母は周りが嫌う金貸業をし、自分の歯の治療を我慢し、100円で2枚のパンツをはきながら、お金が貯まると兄の手術代として二度手術をした。しかしみつくちは完全には治っらなかった。
1990年代後半となり、兄は手術で進級が遅れ、ともに高校生の同学年となる。弟は学校の番長となり、端正な顔立ち故に他校の女生徒にも人気があった。兄ソンヒョンはひたすら母の期待に応え、学校一成績が良かった。そんな二人が同時に近隣地域で最高のクイーン-ミリョン(イ・ポヨン)に惚れてしまい,大喧嘩をした日,弟に『ジョンヒョン!俺の願いが一つあるんだ。兄さんって一度でいいから呼んでくれよ.』と言う。
ソンヒョンは、母の願い通り、ソウル大学医学部の難関を突破する。一方、ジョンヒョンは、予想通りの浪人生。母は、医者の母親が嫌われる職業ではいけないと、長年の高利貸し業を辞め、食堂を始めるために、建設中ビルの一角の新築店舗を契約し内金を入れる。しかし、不動産屋が金を持ち逃げしてしまう。ジョンヒョンは怒鳴り込んで荒れ狂ったように暴れるが、金は戻って来ない。借金の取り立ては、幼馴染の知的障害者・ドゥシク(チョ・ジヌン)の母が営む店にまで及ぶ。
弟は母のため借金取立ての仕事を始め危険な男達とつきあうようになり、明日の始発でソウルにソンヒョンが戻るという夜。母の歯痛を止めるために鎮痛剤を買いに弟の偽バーバリーコートを着て出ると、雨が降ってくる。そこでジョンヒョンは兄を迎えにでる。そして争いに巻き込まれる‥。
ネタばれになるが、失意のどん底の母の誕生日にソウルからバラの花が届けられたり、ジョンヒョンがカメラ店に現像に出した写真を取りに行った時、「誰が撮った写真です か?」と、聞かれ、「うちの兄貴です」と誇らしげに答えるシーンもある。家族・兄弟の絆を描いた感動の映画である。
この映画が韓国で観客動員200万人を越えたヒット中に、主演のウォンビンが、ジャガイモの産地で知られる故郷・江原道で上映会を開いたことがある。映画館がないので地元の福祉会館に住民を招いて開催されたこの上映会には、余糧面(ヨリャンメン)の両親も駆けつけた。ジャガイモ大好きの彼は、その席上「10年後には田舎でジャガイモを育てて暮らしたい」と語ったとか。韓流ブームの立役者のひとりと言われ、『アジョン(おじさん)』などで知られている。
2006年、邦画。監督:西村 弘。
桂望実の小説であり、漫画にもなっているものを、そのストリーを多少変えて映画化している。
ある県庁の商工労働部の係長である野村聡(織田裕二)が民間企業との人事交流研修のメンバーとして研修先である三流スーパー「満天堂」を訪れる。「満天堂」はこれまでに消防署、保健所から何度も注意を受け、営業差し止め寸前だった。その店には、彼の教育係としてパート従業員の若い二宮あき(柴咲コウ)がいた。キャリアーで出世を志向する彼が、赴任して組織図やものごとのマニニアルを求めても何もない。お客様の満足が第一であり、何あってもお客様は悪くないとし、暇な老婆の相手をしたりしている。スキルを求め、マニュアルつくりを考える野村は、お客の対応のない惣菜担当に回される。
そこで見たのは、写真のコロッケやポテトサラダ用の「男爵薯」。休眠から覚め、芽が伸びて、店頭には並べられない代物*。「このジャガイモ、かなり古いですけど、使っていいんですか」「いいの。コロッケに使うんだから」「だって、芽がこんなに沢山出てるじゃないですか」「いいの。いつもこれでやってるの」。(*農家から大量にもらう我が家では、芽を捨てて使用しているレベルで、甘いジャガイモ)
野村は、不衛生かつ法外な行為であるとスーパーに改善提案書を提出。さらに、適正な素材を使った高級なお弁当を販売することを発案する。しかし、野村発案の高級弁当は全く売れず、お客は従来の380円のものを買って行く。それでも、野村は努力し続けるが、自ら関わっていた県庁のプロジェクトから知らぬ間に外され、フィアンセの建設会社社長令嬢からも婚約破棄を言い渡され、散々な目に会い、酔いつぶれてしまう。
しかし二宮から誘われデパ地下(天満屋高松店)でマーケティング調査をすると、データでは知れなかった女の購買行動・心理に気づかされ、さらなる追求後に満天堂の経営改善提案書をまとめ、最高の形で研修を終える。
その頃、野村が作成した改善提案書を読んでいた二宮は、野村の指摘が的確であること、店がこのままでは存続危機にあることに気が付き、店も消防署の査察にパスできる。野村も県庁の大プロジェクのコスト削減を提案でき、二宮にも「今度デートに付き合ってくれない?」と言うことができ、長い映画がThe Endとなる。
2020年、邦画。監督・撮影:百崎満晴。
小林ムツさんに惹かれて18年にわたり取材を続け、NHKで2002(平成14)年から放送されて大反響を呼んだ7本のドキュメンタリーシリーズを集大成したものである。
場所は、埼玉県秩父市吉田太田部楢尾と言う山深い小さな村であり、その山間の段々畑に花を植え続けた小林ムツ・公一夫婦を中心にその歩いた道を、美しい山里の四季とともにたどる。
小林ムツさん(1923〜2009年)は戦後公一さん(1926〜2006年)と結婚、畑、養蚕、炭焼きを共にし、平成に入った頃から、夫の公一さんとともに、丹精込めた段々畑をひとつまたひとつと閉じそこに花を植えてきた。その数、1万本以上。
ムツさんは語る。
「長い間お世話になった畑が荒れ果てていくのは申し訳ない。せめて花を咲かせて山に還したい…」。
それはまるでふるさとに花を手向け、終わり支度をしているかのようであった。二人が心がけていたのは、いつか誰も世話をする人がいなくなっても咲く、丈夫な花を育てること。人も花も、老いて枯れる時が来ても、命が次に引き継がれるように願って…。
暮らす人が年々欠けていく小さな村は、春、色とりどりの花に包まれるようになった。福寿草に始まって、レンギョウ、ハナモモ、ヤマツツジ...。お年寄りは緑や花を楽しみ、自然に生きている。ムツさんの庭では、アジサイが似合いの雨を受けて咲き、秋は、苗木の時から夫婦で育てたモミジが彩る。「いつか人が山に戻ってきたとき、花が咲いていたらどんなにうれしかろう。」柔らかな笑顔でそう言っていたムツさん。しかしやがて、それぞれ『はい、お先にね』と静かに言わねばならない時が近づく。
話はムツさんが中心であるが、戸数5戸、住人9人の集落でジャガイモがからむのは篠塚ヨネ(1917〜2008年)さん。隣町から楢尾に嫁ぎ、夫とともに山仕事で暮らしてきた。夫に先立たれた後もひとり暮らしを続け、90歳を過ぎ、町に住む息子に同居をすすめられても「お父さんの一周忌までは」「ジャガイモを掘り終えるまでは」と、なかなか首をたてに振らず、山を離れるのを先延ばしにしていたが、彼女にも急斜面に咲くひとつの花のようにいのちの終わりがくる。
2018年、邦画。監督:前田哲。
渡辺一史の作品を映画化したもの。幼い頃から全身の筋力が徐々に衰えていく進行性筋ジストロフィーという難病を抱えながらも、札幌市内でボランティアの助けを受けながら両親とは別に自立生活をしている男性の鹿野靖明(しかの やすあき、大泉洋)が主人公。そのボランティアのひとりに、田中病院(佐藤浩市)の跡継ぎで、北大医学部学生久(三浦春馬)がいる。その彼に頼まれボランティアをする安堂美咲(高畑充希)は、日々鹿野の気まま勝手とおしゃべりに振り回されている。映画の始めのシーンでも鹿野が夜中にいきなり「バナナが食べたい」と言い出し、ボランティアの一人が近所で開いているコンビニを探しに走るシーンがあり、これが映画のタイトルとなる。
ジャガイモ絡みでは、その後、鹿野の母(綾戸智恵)が家を訪ねてきたとき、ボランティアの皆さんへと稲荷寿司と一緒に当時は営業していた『くりやまコロッケ』を持ってくるところがあった(写真)。
鹿野は車椅子に頼る身でも、ボランティアと喧嘩し、傷つけ合い、本気でを通し、治療も自分を通し病院を変えてみたり、ひとりでは体を動かせないうえ、人工呼吸器の使用により痰の吸引を24時間必要とする生活を選んでいる。大泉は役つくりに減量をし、身についている北海道弁で軽口をたたき、24時間体制で支えるボランティアたちと対等な関係を維持しながらの交流が描かれていく。最初鹿野に反発する美咲であるが真っ直ぐ生きる彼に次第に惹かれてきたとき、退院祝賀パーティの皆の前で指輪を出されることになる。美咲は田中が好きで彼の父から嫌われないためにも本気で北海道教育大学を目指しているのだが、自分の気持ちに素直に生きれないで悩む田中との心の触れ合いも絡み、映画コマーシャルの笑いと涙の感動作となる。
終活に関わっている尾上正幸さんは、この映画からおよそ次のように生き方、考え方をまとめている。すなわち、障害者は自分でできないことは多いが、苦しまず「頼ればいい、できないんだから」と生きよう。そして「美しく生きるの」ではなく、「わがままに生きる」のがよい。難病や認知症の介護はその親がするものと考えがちだが、ひとりで犠牲にならずに、その自立のためのボランティアを求めよう。助ける側にも生き方、考え、思いなどで得るところがあるから。
2015年、アメリカ映画。監督:ジェシー・ネルソン。
タイトルの晩餐のふた文字に惹かれ、ジャガイモが何らかの形で出てくるだろうと期待しつつ見ることにした。
小雪の舞うクリスマス・イヴ。クーパー家では、毎年この日には一族全員が集まり晩餐会を開く習わしとなっていた。この日を最後に離婚することを隠している父サム(ジョン・グッドマン)と母シャーロット(ダイアン・キートン)は、一家団欒(らん)はこれが最後・最高のクリスマスにしようとしていた。
しかし、秘密を抱えているのはこの二人だけではなかった。映画では、家族の全てが、平行して思いもよらぬ内側を見せていく。
元教師の祖父(アラン・アーキン)にはお気に入りの若いウェイトレス(アマンダ・セイフライド)がおり、不味いレストランなのに通いつめている。創作話の好きな娘のエレノア(オリヴィア・ワイルド)は、不倫の恋を隠すため、空港で出会った青年に恋人役を演じてくれと頼み、電車で一緒にリハーサルしつつ家に向かう。子持ちの息子のハンク(エド・ヘルムズ)は失業を親に隠し面接を10数回している。母の妹で教養のあるのエマ(マリサ・トメイ)に至っては、姉にあげるブローチを盗んで口に隠したりして、万引き容疑で黒人警察官に逮捕され、警察の車で連行され、欠席となるのか、いつものように遅刻するのか気になるところである。
このように、晩餐会は始まる前から波乱満載の状態。しかし時が来て幕が開けるが、予期せぬハプニングからみんなの嘘が次々とバレていく。食事中祖父のバッキーが脳卒中で倒れ、病院に行き、皆がそこのキャフェテリアに移動することになって、全員思いもよらぬ方向へと展開していく。その波乱は、最悪なのか最高に収まるのか...。
このホームコメディーにはジャガイモは少なくとも3度現れる。まず、ハンクが仕事を求めて訪ねた先の机の上に成形ポテトチップス(生ジャガイモをスライスしたものではなく、普通筒に入れて売られているもの。註参照)が10数枚積み重なっていた(写真1)。次がシャーロットが家族のためのサラダをつくっている時、柄のある鍋のマッシュポテトに愛犬ラグスが口を突っ込む(写真2)。3つ目はパーテー中に母が大きなシャモジでマッシュポテトをすくい上げて右側に『ポテトはいかが』と出すものであった。
ポテトチップスには「普通のポテトチップス(Real Chips)」と「成型ポテトチップス(Fabricated Chips)」の2種類が存在する。
前者はは生ジャガイモをスライスして揚げた商品である。後者はグラニュール状ないしフレーク状にして乾燥した輸入原料又は国産ジャガイモをマッシュしてから加工し、筒型タイプ容器で売られているものである。P&G社によって開発され、1967年に「Pringles Newfangled Potato Chips」という商品名で売り出した(翌年「プリングルズ」に改名)。国内では同じく輸入原料を使ったヤマザキビスケットのチップスターが首位を保っているが、近年カルビーも参入し、クリスプの名で、うすしお味、コンソメパンチなどを出している。国内産には発がん性を危惧されている塩素系除草剤(芽止め剤)を塊茎に噴霧して使うことは許されていないため、賢い消費者の選択を期待している。
安全性は国産の生いもをスライスするリアル・チップスが勝るが、成形チップスは嵩張らないため、遠足、スポーツ観戦、新幹線の移動中などに選択されることが多い。