ジャガイモの出てくる 映 画  第35集

浅間和夫

351.『クリスタル殺人事件』 (原題:The Mirror Crack'd)
1980、イギリス映画。監督:ガイ・ハミルトン。
監督は『007/黄金銃を持つ男』などで知られる人。アガサ・クリスティの原作『鏡は横にひび割れて』を基に映画化したもの。1953年、 ハリウッドの往年の大女優マリーナ・クレッグ(エリザベス・テイラー)、その夫で映画監督であるジェイソン・ラッド(ロック・ハドソン)らが撮影のためロンドン郊外の閑静な街を訪れ、町中を挙げて大歓迎パーティーが催される。
その際野外ではゲームも行われ、なんとポテト・サック・レース(Potato Sack Race)が目に入った。プレーヤが当時のジャガイモ用麻袋に入り、袋の上部をしっかりと掴かんでスタート・ラインに並び、オリンピックで耳にするOn Your Markに続く合図と共にピョンピョン跳びつつ、ゴールに向かうものであった(写真)。
 室内では、マリーナのファンであるヘザー・バブコックが駆けつけ、見つけるや否や戦時中マリーナの慰問公演を見て感激し、舞台裏で彼女に思わずキスしてしまったという昔のことを興奮して一方的に語る。ちょうど、そのころ、製作者マーティ(トニー・カーティス)と共に主演女優でライバルのローラ(キム・ノヴァック)が到着し、マリーナの視界に入る。そのためか、階段に飾られた聖母子像を見つめためか、一瞬顔をこわばらせ氷のように固まっていた。それに続いてジェイソンがマリーナのために持って来たカクテルをもらって飲んだヘザーが突然倒れ、急死する。
 この村には推理好きで有名な老婦人ミス・ジェーン・マープル(アンジェラ・ランズベリー)が住んでいる。その甥のクラドックはスコットランド・ヤードの警部であり、睡眠薬にカクテルのアルコールが効いたことを知らす。毒の入手経路など従来の捜査で行われそうな話は出てこず、マープルのお手伝いの情報を効果的に活かし、機知と観察眼と想像力で事件を解決するミステリーであり面白い。
神父によると昔キスしたと言うヘザーはこのとき風疹ウイルスによる三日はしかにかかっていた。マリーナは妊娠中のこの風疹が原因で障害児を産んだため、心の病を患い、女優生活に長い空白をつくり、漸くこの街で主役を得た。あの時、ヘザーこそ全ての不幸の元凶だ、そう考えた。そして即座にあることをした。ジェイソンもこれまでの全てを知っていた。彼はマリーナの名誉を守るため、昨夜チョコレート液の中に大量の睡眠薬を入れ彼女自身が永遠の眠りについたようにしたとマーブルに告白する。その確認のためマープルらが部屋に入ってみると、マリーナは、そのチョコレート液を飲まず、...。

352.『炎の人 ゴッホ』 (原題:Lust for Life)
 1956年、アメリカ映画。監督:ビンセント・ミネリ。
 ジャガイモ関連の絵を残した画家はそれなりにいるが、単年度にたくさん書いた画家と言えばゴッホであろう。例えば1885年オランダで、「ジャガイモの皮をむく農婦」2枚 、「ジャガイモを食べる人々」の習作及びそのもの2枚、「ジャガイモを掘る2人の農婦」、「ジャガイモのかご」3枚、「ジャガイモのかごのある静物、周囲に紅葉と野菜」を描いている。このため、後期印象派画家の1人、ゴッホの生涯を描いたこの映画を本シリーズに取り上げることとした。
 この映画は、1934年のアーヴィング・ストーンの小説『炎の人ゴッホ』(新庄哲夫訳.1990年.中央公論社.以下原著と言う)を元に作られている。
 ブラッセルのベルギー伝道委員会が経営する学校を出たフィンセント・ファン・ゴッホ(カーク・ダグラス)は、炭鉱町で司祭を務めるものの、悲惨な労働者の生活を目撃し、彼らと同じ貧しさに自ら進んで入り、破門され、体を壊し原著ではジャガイモを茹でて食べている。彼の弟テオ(ジェームズ・ドナルド)は画商として成功しており、彼を暖かく故郷へ連れてくる。彼はそこで絵を描くことをはじめ、袋にジャガイモを詰める農夫の習作を描いて父に鈍いと叱られる(原著)。苦労知らずの人には魅力を感じず肖像画を書くことを嫌うがパリへ行く実力もないと知っている。ハーグに移り住んでから、子持ちの売春婦クリスティーナ(パメラ・ブラウン)と結ばれる。テオの送金を受けているものの、彼女が訪ねてきたときの食事はジャガイモとお茶であり、彼女は牛肉を買いに行くことになるほど(原著)、その後破綻。このように、ゴッホはジャガイモが好きであり、ジャガイモにコーヒーはその後も複数回見られる(原著)。
 1883年12月から1885年11月まで2年間ヌエネンで過ごすが、ジャガイモを常食としているデ・フロートという質素な農夫の一家と親しくなり(原著)、映画では妻から種いもの支払いをどうするのかが話題にあがっていた。そこで『ジャガイモを食べる人々』(写真)が描かれ、頭書に書いた多数の作品を残すことができ、ヌエネンには今日ゴッホ像が建てられている。
 故郷で努力した後、パリで店を任されているテオをたずねて行く。そこでは、スーラ、ロートレック、ルノア−ル、ポール・ゴーガン(アンソニー・クイン)らが、自らの個性を伸ばそうと競っていた。置かれたものを描くよりも動きのあるものが好きなゴッボだったが、彼らによりさらに力をつけ、陽の光を求めてアルルへ移り、炎のような真夏の野原を、夢中になって描きまくる。この時期に、あるレストランに入り、おかみさんに「ジャガイモを煮てくれないか」と頼み、「無理だね」と断られたりしている(原著)。  目指す画風の異なるゴーガンとの共同生活に失敗し、自分の手で耳を切り取る事件を起こし、結婚したてのテオの援助でサン・レミイの精神病院に移り、かなり回復してからパリに近いオーヴェールの病院に移ることができるのだが、麦畑の中で群れをなす鳥の不気味な姿を描きながら、「だめだ、描けない」という一言をのこして、ゴッホは、自らの脇腹をピストルで射つのだった。行年37歳。原題の意味は、「生への渇望」。

353.『卒 業』 (原題:The Graduate)
 1967年、アメリカ映画。監督:マイク・ニコルズ。
 米国東海岸の有名大学陸上部のスターで新聞部長でもあったベンジャミン・ブラドック(ダスティン・ホフマン)は、卒業を機に西海岸のカリフォルニア州へ帰郷する。親戚仲間が集った祝賀パーティーで、この将来を嘱望される若者に人々は陽気に接してくれる。そのパーティーで、父親(ウィリアム・ダニエルズ)の共同経営者であるミスター・ロビンソンの妻(アン・バンクロフト)から車で送るよう求められ、着いた家では巧妙且つ執拗な誘惑を受ける。こうして、ベンは大学院への進学を期待されてはいるが、煮え切らない夏休みのなかで夜ごとの愛人役にされることになってしまう。
 迷える息子を心配した両親は、同時期に北部のバークレーの大学から帰郷した幼なじみのロビンソン家のエレーン(キャサリン・ロス)をデートに誘えという。一度きりのデートでわざと嫌われるようにヌード・ショーなどを回ったものの、最後に赤いアルファロメオの車中でハンバーグに続きフレンチフライを食べて(写真)互いに好意を抱いてしまう。
しかし、次のデートには何とミセス・ロビンソンが現れ、ベンにエレーンと別れるように迫り、別れないなら情事を娘にバラすと脅す。ベンは自ら純なエレーンにあなたの母と不倫関係にあると告白する。ショックを受けたエレーンは、詳しい話も聞かずに、ベンを追い出す。
 しかし、ベンはエレーンを忘れられず、彼女の大学に押しかけると、彼女は退学していた。そしてエレーンが医学部卒業の男と結婚することを知る。サンタバーバラにある教会を聞きだして、そこまで駆けつけたベンは、エレーンと新郎が今まさに誓いの口づけをした場面で叫ぶ。「エレーン、エレーン!」。ベンジャミンへの愛に気づくエレーンはそれに答える。「ベーンッ!」。  ミスター・ロビンソンはベンを阻止しようとし、ミセス・ロビンソンは「もう遅いは!」と叫ぶが、エレーンは「私には遅くないわ!」と答え、若い二人は手に手を取って教会を飛び出し、バスに飛び乗る。バスの席に座ると、略奪婚するほどの青春もいつかは色褪せることを暗示するかのように変わり、「サウンド・オブ・サイレンス」が流れる。

354.『42〜世界を変えた男〜』 (原題:42)
2013年、アメリカ映画。監督:ブライアン・ヘルゲランド。
1947年、ブルックリン・ドジャース(ロサンゼルス・ドジャースの前身)のゼネラルマネージャー・ブランチ・リッキー(ハリソン・フォード)は、アフリカ系アメリカ人のジャッキー・ロビンソン(チャドウィック・ボーズマン。20年死亡)を見出し、彼をチームに迎え入れることにした。当時はまだ黒人差別が激しく、メジャーリーグも白人だけのものだったため、二人はファンやマスコミ、チームメイトからも誹謗中傷を浴びせられ、危険球を投げられたりする。孤独な闘いを強いられても自制心を貫き通し、プレーに徹するロンビンソンの姿勢に、やがてチームメイトや観客の意識をも変えていく。
ジャッキーの偉業は米野球界では知らない者がいないほどになり、球界は彼に敬意を評し、背番号42をアメリカ・カナダの全ての野球チームの永久欠番と決定することになった。映画はアフリカ系アメリカ人初のメジャーリーガーとなったジャッキー・ロビンソンを描いたものである。

 永久欠番に絡めて、本映画からの脱線をお許しいただきたいジャガイモの話がある。それはインディアンス傘下の2Aウイリアムスポート・ビルズに所属していたデイブ・ブレスナハン(Roger Philip Bresnahan)捕手のこと。1987年8月31日、この日チームは「ポテト・デー」と銘打ち、ジャガイモを持ってきた観客には入場料を割り引くサービスを行い、多数の観客を集めた。
相手チームの攻撃が2死三塁という場面。投手からきた球を捕手デイブ・ブレスナハンがミットに収めた後、サードに向けて牽制球を投げた。しかしサードの手の届かぬ暴投。走者がホームに帰ろうとしたところ、本物の球で突如タッチ。レフト線に転がっていった物は実は「ジャガイモ」(写真)。もちろんこれは反則で走者はセーフとなったが、スタンドには大受けした。後日監督がブレスナハンに罰金50ドルを命じたところ、50個のジャガイモを持参し、球団を怒らせクビになった。これには抗議が殺到し球団は後日「ブレスナハン・デイ」を開催して、ブレスナハンの背番号59を永久欠番とした。そのセレモニーの挨拶で、「かつてルー・ゲーリッグは、2000試合以上に連続出場して、3割4分以上の打率を残して永久欠番となり、『自分は世界で一番幸せな男だ』と言いましたが、自分はマイナーで2割ちょっとしか打てず、ジャガイモを投げただけで永久欠番になったのだから、世界で一番幸せな男よりも幸せだ!」と語ったという。

355.『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』
 2019年、イギリス・ウクライナ・ポーランド映画。監督:アグニエシュカ・ホランド。
 旧ソ連時代のスターリン政権のことが映画で観れると思ってたら、スターリンは出てこない。
 1933年、世界は深刻な経済恐慌に陥っていた。その中なぜスターリンが統治するソビエト連邦だけが何故好景気なのか繁栄しているのか。ヒトラーに取材した経験を持つ若き英国人記者ガレス・ジョーンズ(ジェームズ・ノートン)はその謎を解くためにモスクワを訪れる。しかし、当局からホテルを指定され、自由な行動は許されない。ニューヨーク・タイムズの記者であるエイダから「ウクライナに答えがある」と告げられ、監視する当局の目をかいくぐり、汽車に乗り込む。
 極寒のウクライナでは、死体で山積みの荷車に母親の死体を無造作に積んで、まだ泣いている幼児も死体の上に放り投げたり、食料を盗む子供、飢えと寒さを嘆く歌を歌う子供がおり、立ち寄った家で肉を出され、子供に何の肉か訊ねると「兄さん」と答が帰ってくる。そのような想像を絶する悪夢のようなつくられた大飢饉光景に出会った。この世に言う"ホロドモール"撮影後消されずにイギリスに戻ることはできたが、エピローグの字幕でジョーンズは30歳前に中国の取材中に誘拐され亡くなくなったことが示され、それがソ連によるものであることが示唆される。
 スターリンの恐怖政治によって粛正され弾圧された犠牲者は、1938〜39年の大粛正期だけで知識人、科学者、政治活動家を中心に170万人が処刑または投獄され、その頃の彼の執務は死刑執行命令書に署名することで費やされたと言われている。

 スターリンは出てこないが、彼とジャガイモについて取り上げたい。すなわち美食家であり、よく食べ、ウオッカとジャガイモが好きな人であった。「スターリンーその秘められた生涯ー」<バーナード・ハットン著・木村浩訳、講談社学術文庫>などによると、朝から酒を飲み、主菜として、串焼き羊肉(シャシリーク)に蒸したジャガイモを添えるか、大きなステーキに蒸し焼きのタマネギを添えたものを食べ...ある時は、焼タマネギとゆでたジャガイモを添えた豚肉料理、またある時は、焼きジャガイモ添えのウィーンナシュニッツェルであり、ピラフ(肉飯)、家鴨の焼肉も好きだったという。

 スターリン時代、人々は平気で嘘をつき、密告することが身についていたが、例外の人もいた。レニングラードに昭和の初め南米からジャガイモ栽培種や近縁種を集めて品種改良に役立てていたバビロフ研究所がある(遺伝的多様性が高い地域がその作物の発祥地である、とする学説は有名。メンデル遺伝を否定するルイセンコに排撃され、1943年監獄で死亡した。)。第二次世界大戦の時、石炭や薪がなくなり、ネズミと戦い、食べ物がなくなった。ある研究員は、南米から持ってきた遺伝子保存用のジャガイモが貯蔵庫にあるのに、その種イモには手をつけることなく餓死していたことはジャガイモ育種家にはよく知られた話。

詳しくは 大切な遺伝資源を守った男 へ

356.『夜霧よ今夜もありがとう』 (英題:A Warm Misty Night)
1967年、邦画。監督:江崎実生。
アメリカ映画の『カサブランカ』に似ていると言われ、日本映画離れしたムードアクション映画に仕上げられており、浅丘ルリ子もイングリット・バークマンに比較されている。話のタネを追加すれば、映画主題歌を作詞作曲した浜口庫之助は国籍不明の伴奏者役で出演している。
 外国航路の貨物船の船長・相良徹(石原裕次郎)は帰国して、恋人のバレエダンサー北沢秋子(浅丘ルリ子)に求婚し、2人は将来を誓い合う。しかし約束の教会に向かう途中、秋子が謎の失踪を遂げてしまう。夕暮れの協会で相良は秋子をいつまでも待ち続けた後、失意のうちに船を降りる。4年の歳月が流れ、横浜で表ではナイトクラブ「スカーレット」を経営し、裏では危険な国外逃亡を請け負う「逃がし屋」をやり、本当に困っている人だけに抜け道を与えている。
 そんなある日突然、秋子が姿を現わす。秋子はグエン(二谷英明)と名乗る男の妻に収まっていた。グエンは、祖国で革命が起り、直ぐ帰国したいため、シンガポール行きの船を探してくれと言う…。4年間の空白を相良は感じながら、秋子への想いが再び募っていく…。
 この映画にジャガイモはでてこないが、カラオケでもよく知られた歌となり、石原裕次郎は幼少時北海道の小樽市で育ったためか、ジャガイモ、とりわけ、暑い日などに欲しくなる冷製スープ・ヴィシソワーズ(写真:札幌市中の島穀物祭提供)が大好きな人と知り、取り上げることとした。裕次郎は兄石原慎太郎の芥川賞受賞作『太陽の季節』を映画化した1956年にデビューし、同じく『狂った果実』では主演を務め、相手役の北原三枝と結婚。その後は俳優・歌手として活躍し、日活の看板スターとなった。
 石原裕次郎、渡哲也らの石原軍団がロケや打ち上げなどのおりに食材をドッサリ買い込んで作っていた男の炊き出し料理が『石原軍団炊き出しレシピ33』として1冊の本になり青志社から石原死後であるが2011年に出されている。これには寒い日に体が温まるホワイトシチュー、皆の好きなポテトサラダ(品種は彼が生存時代の男爵薯から、キタアカリ、インカのめざめと変わっている)、裕次郎が得意としたハヤシライス、バターガーリックライス、ヴィシソワースなど計33を載せている。ヴィシソワーズ(写真)は食卓にもう一品欲しいときに人気があり、仕上がりなめらかさにかかわるので、ジャガイモが充分柔らかくなるまで煮てつくり、冷蔵庫で冷やし、食べるときパセリを散らして食べるもの。 口当たりが良く、暑くて食欲がない夏に好んで食べていたのだろう。

357.『海街diary (うみまちだいありー)』
 2015年、邦画。監督:是枝祐和。
 鎌倉に暮らす香田三姉妹は父と母都(大竹しのぶ)が家を出て行ってから祖母と3人で暮らしてきた。そこへ15年以上音信不通であった父の訃報が届く。 山形の葬儀に出かけた長女の幸(綾瀬はるか)、二女の佳乃(長澤まさみ)、三女の千佳(夏帆)は、そこで腹違いの妹浅野すず(広瀬すず)と始めて遭う。すずの実母は他界し、後妻が喪主となっていた。葬式からの帰り、幸はすずに「鎌倉に来て一緒に暮らそう」と誘う。すずは四十九日を済ませた翌週に、鎌倉の異母姉たちが住む一軒家に引っ越してくる。かくて、異母妹を「四女」として迎えた香田家の新たな共同生活が始まる。
 月日が流れ、中学3年に進級したすずは静岡の掛川学院からのオファーを受け、姉と離れるため戸惑うが、このころ仲良くなった風太に背中を押されて静岡に行く決心をし、一旦鎌倉を離れことがある。
 金沢からすずの母の妹が訪ねてきたり、祖母の七回忌で、三姉妹の母・佐々木都と顔を合わせることがあったりして、過去のしがらみを知り、姉妹の抱いていた想いもしだいに明らかになっていく。これらの間に、幸の心の病を持つ妻を持つ小児科医・椎名和也との関わりで、自分が当事者になってはじめて、どうにもならない気持ちや状況があること知る。加えて、佳乃の酒癖と男運の悪さ、破天荒な千佳の浜田三蔵店長との恋愛模様も織り込まれる。
 ジャガイモについては、幸が青果店で、「ポテトサラダをつくるの」と言いながら、数個入った袋を手にし(写真)、その後のテーブルのサラダを拝見できたる。その後、お袋の味を知らない千佳とすずの二人がカレーライスを食へるシーンでも見ることができる。
 家の庭で四人揃って花火をする風景なども家族の絆を深めていくシーンとして認められる。地元で愛され続けている海猫食堂に務める二ノ宮(風吹ジュン)が亡くなる。浜辺を散歩しながらすずは彼のように、父も「まだ綺麗なものを綺麗って思えるのが嬉しい」と話していたことを言う。そんな話をしながら、姉たちはすずの存在を愛おしく感じるのだった。

358.『わが谷は緑なりき』 (原題:How Green Was My Valley)
 1941年、アメリカ映画。監督:ジョン・フォード。
 イギリスの炭鉱労働者一家を描いたヒューマンドラマ。今や初老となったヒュー・モーガンは生まれ故郷のロンダの谷を出ようとしていた。ヒューは谷が緑だった頃、一家みんなが揃って幸せだった少年時代(写真)をしみじみと回顧する。
 19世紀末、イギリスのウェールズの緑豊かなロンダ渓谷で暮らすモーガン家の男たちは、末っ子のヒュー(ロディ・マクドウォール)を除いて皆炭坑夫で、一家は幸せであった。長男の結婚披露宴の日、姉アンハード(モーリン・オハラ)は新しく谷に赴任してきた牧師グリュフィード(ウォルター・ピジョン)と出逢い強い印象を受ける(写真)。
 ある日、会社が賃金を引き下げたことから息子たちは組合を作ろうとして父と対立し、家を出てしまう。やがてストライキが始まる。父は仲間たちから非難を浴び、母は夫の援護に出かけたものの川に落ち、ヒューは助けようとしたため重症の凍傷になってしまう。グリュフィード牧師の愛情溢れる手助けにより、再び自分の足で歩けるようになる。グリュフィード牧師は、アンハードを深く愛するようになるが、彼女の幸福を思って炭坑主エヴァンズの息子との結婚を勧め、自分は身を引く。 ヒューは牧師の助けもあって隣町のナショナルスクールに通うが、炭坑夫の子供としていじめにあう。谷の人々からボクシングを習うなどして、一目置かれるようになって卒業し、炭鉱で働く。しかし石炭の需要が減り、高給の兄たちは解雇され、谷を後にする人が増えてくる。 そしてある日、長男が事故死し、炭坑主の息子へ嫁いだアンハードは結婚に破れ谷に帰ってくる。しかし、グリュフィード牧師との心ない噂をたてられる。人々の偽善に傷ついたグリュフィード牧師は谷から去る決意をする。その時、炭坑から落盤事故を報せる警笛が鳴り響く。ヒューは戻らない父を案じて、グリュフィードらと共に坑道へ入って行く。岩に挟まれている父を見つけたヒューは何とか助け出そうとするが、昔気質でいつも正しいことを言ってきた父は「お前はもう一人前だ」の言葉を遺して息絶える。父の遺体とともに地上に戻ってきたヒューはかつての幸せに溢れていた日々を思い出すのだった...。
 筆者の関心は姉を務めた女優モーリン・オハラにある。ハリウッドでは、その黄金時代からセクハラや暴力の問題が時折知られていた。1945年、彼女は勇気をもって映画の撮影時に監督やプロデューサーといった有力者から不適切な要求をされたことへの怒りを『New York Mirror』に掲載した。すなわち、「私はハリウッドの中傷合戦において救いのない犠牲者です。監督やプロデューサーが毎朝私にキスしたり体を触ったりするのを拒んだせいで、"オハラは女じゃない、冷たい大理石の彫刻だ"、と言いふらされました。私がハリウッドの求める女性でないなら、今すぐここを去ります」と。その結果オハラはアイルランドのダブリン出身であったため、「性的魅力のない冷めたジャガイモ」というあだ名を付けられた人であった。アイルランド移民の子であるジョン・フォードからセクハラを受けていたかどうかは判らないが、『静かなる男』(1952)、『荒野のガンマン』(1961)、『オンリー・ザ・ロンリー』(1991)などでも一緒している。

359.『愛の不時着』
2019〜2020年、韓国ドラマ。脚本:パク・ジウン。
大韓民国のtvNで放映されたテレビドラマ。全16話かななる。
財閥の父親が刑務所から執行猶予で出てくることになり、後継者の発表かと兄弟が集まるが互いの弱みを暴露しあい喧嘩になってしまう。そこに来た娘セリ(ソン・イェジン)はお疲れ様でしたと父親に挨拶をして帰ろうとするが、父親はセリを後継者にする!と言う。セリは人事権も任せてもらえるなら、と承諾する。
 翌日、新商品のパラグライダーに乗ったセリだったが、突風に流されてたどり着いた先で木にぶらさがり気絶。我に戻り、大声で助けを求める。北朝鮮の将校リ・ジョンヒョク(ヒョンビン)に助けてもらうものの、ここは北朝鮮だと聞かされる。すぐ停電になり、近所のオバサン達が集まってきてようやく納得する。
 ここから第2話。
 ジョンヒョクはスパイかも知れないこの女性の命を奪うべきかと悩む。セリも必死であり、私を助けてくれたら必ず恩返しをすると話すが、ジョンヒョクは相手にしない。セリは不時着した所まで送ってくれれば自力で帰るとも言うが、ジョンヒョクの部下は高圧電流の強さを伝えて脅す。セリはキムチ専用の貯蔵庫を見て目を輝かせたりするが、緊張の糸が切れたかのように、号泣した際、ジョンヒョクから「災いのあとには、幸せが来るものだ」と慰められる。
 以前墓荒らしをしていた3人が交通事故で全員死んだのは、故意か否か問われることになり、平壌(ピョンヤン)に行くことになるが、ジョンショクはセリにそっと韓国製のシャンプー、アロマオイル、下着まで袋に入れておいてやる。そして「隊員たちがいるから安心しろ」と家から出ていく。
 写真のジャガイモはこの後半に出てくる。セリが穴を掘っているジョンヒョクの部下に「何のために穴を掘っているの」と問うとジャガイモを手にするピョ・チス(ヤン・ギョンウォン)は「無礼な南朝鮮の女を埋めるのさ」と答える。続けて、北朝鮮語と韓国語の通訳をしながら、セリと隊員の心の橋渡しをするキム・ジュモクが「地下水の工事って口実です。あなたを守れと言われています」と教えてくれる。それに、ピョ・チスが「監視しろということだよ」と付け加えるシーンである。
 平壌ではジョンヒョクが総政事局長の一人息子と知る上官がいて、罪を負わされずにすむ。しかし夜、ジョンヒョクの家がある軍人住宅区域に抜き打ちの宿泊検閲が入るとの情報があり、大佐から借りた高官専用車を飛ばして、家に向かう。チョルガンが平壌にいるはずのジョンヒョクの部屋に灯りがついてるため不審に思いキムチ庫を調べセリを発見し、外へ出して銃を突きつける。 高官専用車から降りたジョンヒョクは、チョルガンに「 僕の婚約者です。銃を降ろしていただきたい。 」と咄嗟に言ってしまう。
 婚約者のいる彼がこうまで言っていいのか、このままセリが韓国人だとバレずに隠し通せるのか。笑いあり、涙ありの第3〜16話と続く...。

360.『逃げるは恥だが役に立つ』
 2016年、邦画ドラマ。監督・ディレクター:金子文紀、土井裕泰、石井康晴。
TBS放映のドラマ。原作は海野つなみの同名漫画(講談社「Kiss」にて連載)であり、全11話でできている。
 第1話 プロの独身男と秘密の契約結婚
 森山みくり(新垣結衣)は、院卒であるが内定0で、彼氏なし。派遣社員になるのだが派遣切りとなり、目下求職中となり、「誰からも必要とされないつらさ」を日々感じている。そんな娘を見かねた父親のはからいにより独身の会社員・津崎(星野源)の家事代行として働き始めることになる。かゆいところに手が届く働きぶりにより津崎の信頼を得る。しかし、あることからその仕事も失いそうになる。
 会話中に、なんと「就職という意味で結婚するのはどうですか?」と提案してしまう。かくて真面目でウブな津崎との間に契約結婚することになる。周囲には秘密にして夫が雇用主で妻が従業員という関係が開始されることになる。合意内容は書面に残るから、「言った・言わない」と言う夫婦喧嘩は回避できるであろうが、そんな偽装結婚か事実婚か判らぬ生活が続けられることができるか。秘密の雇用関係に挙式や結婚披露宴はどうなるのか...。
 津崎の会社後輩・風見涼太役には大谷亮平、みくりと津崎の関係を詮索する沼田頼綱役には古田新太、みくりの伯母には石田ゆり子と豪華キャストが顔をそろえている。2021年5月星野源と新垣結衣が、公式サイトなどを通して結婚することを発表して話題になった。(写真は話題のふたり)
 筆者はそれよりも2020年9月25日に放送されたTBS系の『ぴったんこカン・カン』に新垣結衣らがゲスト出演し、古田新太の問い答えて彼女の“好きな野菜ランキングTOP5”を発表したことに関心を持った。その第5位は「タケノコ」、第4位が「大根」、第3位が「カリフラワー」、第2位は「昨日も食べた、とうもろこし」。そして第1位は「ジャガイモ」。お気に入りの食べ方については「おつまみとかでレンジでチンしてバター乗っけて醤油かけたり、ビール飲んだりして」。ほかにも「パスタの明太子ソースとかかけて食べたり」と明かし、古田や藤井隆から深い共感を得ていた。


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