ジャガイモの出てくる 映 画  第35集

浅間和夫

351.『クリスタル殺人事件』 (原題:The Mirror Crack'd)
1980、イギリス映画。監督:ガイ・ハミルトン。
監督は『007/黄金銃を持つ男』などで知られる人。アガサ・クリスティの原作『鏡は横にひび割れて』を基に映画化したもの。1953年、 ハリウッドの往年の大女優マリーナ・クレッグ(エリザベス・テイラー)、その夫で映画監督であるジェイソン・ラッド(ロック・ハドソン)らが撮影のためロンドン郊外の閑静な街を訪れ、町中を挙げて大歓迎パーティーが催される。
その際野外ではゲームも行われ、なんとポテト・サック・レース(Potato Sack Race)が目に入った。プレーヤが当時のジャガイモ用麻袋に入り、袋の上部をしっかりと掴かんでスタート・ラインに並び、オリンピックで耳にするOn Your Markに続く合図と共にピョンピョン跳びつつ、ゴールに向かうものであった(写真)。
 室内では、マリーナのファンであるヘザー・バブコックが駆けつけ、見つけるや否や戦時中マリーナの慰問公演を見て感激し、舞台裏で彼女に思わずキスしてしまったという昔のことを興奮して一方的に語る。ちょうど、そのころ、製作者マーティ(トニー・カーティス)と共に主演女優でライバルのローラ(キム・ノヴァック)が到着し、マリーナの視界に入る。そのためか、階段に飾られた聖母子像を見つめためか、一瞬顔をこわばらせ氷のように固まっていた。それに続いてジェイソンがマリーナのために持って来たカクテルをもらって飲んだヘザーが突然倒れ、急死する。
 この村には推理好きで有名な老婦人ミス・ジェーン・マープル(アンジェラ・ランズベリー)が住んでいる。その甥のクラドックはスコットランド・ヤードの警部であり、睡眠薬にカクテルのアルコールが効いたことを知らす。毒の入手経路など従来の捜査で行われそうな話は出てこず、マープルのお手伝いの情報を効果的に活かし、機知と観察眼と想像力で事件を解決するミステリーであり面白い。
神父によると昔キスしたと言うヘザーはこのとき風疹ウイルスによる三日はしかにかかっていた。マリーナは妊娠中のこの風疹が原因で障害児を産んだため、心の病を患い、女優生活に長い空白をつくり、漸くこの街で主役を得た。あの時、ヘザーこそ全ての不幸の元凶だ、そう考えた。そして即座にあることをした。ジェイソンもこれまでの全てを知っていた。彼はマリーナの名誉を守るため、昨夜チョコレート液の中に大量の睡眠薬を入れ彼女自身が永遠の眠りについたようにしたとマーブルに告白する。その確認のためマープルらが部屋に入ってみると、マリーナは、そのチョコレート液を飲まず、...。

352.『炎の人 ゴッホ』 (原題:Lust for Life)
 1956年、アメリカ映画。監督:ビンセント・ミネリ。
 ジャガイモ関連の絵を残した画家はそれなりにいるが、単年度にたくさん書いた画家と言えばゴッホであろう。例えば1885年オランダで、「ジャガイモの皮をむく農婦」2枚 、「ジャガイモを食べる人々」の習作及びそのもの2枚、「ジャガイモを掘る2人の農婦」、「ジャガイモのかご」3枚、「ジャガイモのかごのある静物、周囲に紅葉と野菜」を描いている。このため、後期印象派画家の1人、ゴッホの生涯を描いたこの映画を本シリーズに取り上げることとした。
 この映画は、1934年のアーヴィング・ストーンの小説『炎の人ゴッホ』(新庄哲夫訳.1990年.中央公論社.以下原著と言う)を元に作られている。
 ブラッセルのベルギー伝道委員会が経営する学校を出たフィンセント・ファン・ゴッホ(カーク・ダグラス)は、炭鉱町で司祭を務めるものの、悲惨な労働者の生活を目撃し、彼らと同じ貧しさに自ら進んで入り、破門され、体を壊し原著ではジャガイモを茹でて食べている。彼の弟テオ(ジェームズ・ドナルド)は画商として成功しており、彼を暖かく故郷へ連れてくる。彼はそこで絵を描くことをはじめ、袋にジャガイモを詰める農夫の習作を描いて父に鈍いと叱られる(原著)。苦労知らずの人には魅力を感じず肖像画を書くことを嫌うがパリへ行く実力もないと知っている。ハーグに移り住んでから、子持ちの売春婦クリスティーナ(パメラ・ブラウン)と結ばれる。テオの送金を受けているものの、彼女が訪ねてきたときの食事はジャガイモとお茶であり、彼女は牛肉を買いに行くことになるほど(原著)、その後破綻。このように、ゴッホはジャガイモが好きであり、ジャガイモにコーヒーはその後も複数回見られる(原著)。
 1883年12月から1885年11月まで2年間ヌエネンで過ごすが、ジャガイモを常食としているデ・フロートという質素な農夫の一家と親しくなり(原著)、映画では妻から種いもの支払いをどうするのかが話題にあがっていた。そこで『ジャガイモを食べる人々』(写真)が描かれ、頭書に書いた多数の作品を残すことができ、ヌエネンには今日ゴッホ像が建てられている。
 故郷で努力した後、パリで店を任されているテオをたずねて行く。そこでは、スーラ、ロートレック、ルノア−ル、ポール・ゴーガン(アンソニー・クイン)らが、自らの個性を伸ばそうと競っていた。置かれたものを描くよりも動きのあるものが好きなゴッボだったが、彼らによりさらに力をつけ、陽の光を求めてアルルへ移り、炎のような真夏の野原を、夢中になって描きまくる。この時期に、あるレストランに入り、おかみさんに「ジャガイモを煮てくれないか」と頼み、「無理だね」と断られたりしている(原著)。  目指す画風の異なるゴーガンとの共同生活に失敗し、自分の手で耳を切り取る事件を起こし、結婚したてのテオの援助でサン・レミイの精神病院に移り、かなり回復してからパリに近いオーヴェールの病院に移ることができるのだが、麦畑の中で群れをなす鳥の不気味な姿を描きながら、「だめだ、描けない」という一言をのこして、ゴッホは、自らの脇腹をピストルで射つのだった。行年37歳。原題の意味は、「生への渇望」。

353.『卒 業』 (原題:The Graduate)
 1967年、アメリカ映画。監督:マイク・ニコルズ。
 米国東海岸の有名大学陸上部のスターで新聞部長でもあったベンジャミン・ブラドック(ダスティン・ホフマン)は、卒業を機に西海岸のカリフォルニア州へ帰郷する。親戚仲間が集った祝賀パーティーで、この将来を嘱望される若者に人々は陽気に接してくれる。そのパーティーで、父親(ウィリアム・ダニエルズ)の共同経営者であるミスター・ロビンソンの妻(アン・バンクロフト)から車で送るよう求められ、着いた家では巧妙且つ執拗な誘惑を受ける。こうして、ベンは大学院への進学を期待されてはいるが、煮え切らない夏休みのなかで夜ごとの愛人役にされることになってしまう。
 迷える息子を心配した両親は、同時期に北部のバークレーの大学から帰郷した幼なじみのロビンソン家のエレーン(キャサリン・ロス)をデートに誘えという。一度きりのデートでわざと嫌われるようにヌード・ショーなどを回ったものの、最後に赤いアルファロメオの車中でハンバーグに続きフレンチフライを食べて(写真)互いに好意を抱いてしまう。
しかし、次のデートには何とミセス・ロビンソンが現れ、ベンにエレーンと別れるように迫り、別れないなら情事を娘にバラすと脅す。ベンは自ら純なエレーンにあなたの母と不倫関係にあると告白する。ショックを受けたエレーンは、詳しい話も聞かずに、ベンを追い出す。
 しかし、ベンはエレーンを忘れられず、彼女の大学に押しかけると、彼女は退学していた。そしてエレーンが医学部卒業の男と結婚することを知る。サンタバーバラにある教会を聞きだして、そこまで駆けつけたベンは、エレーンと新郎が今まさに誓いの口づけをした場面で叫ぶ。「エレーン、エレーン!」。ベンジャミンへの愛に気づくエレーンはそれに答える。「ベーンッ!」。  ミスター・ロビンソンはベンを阻止しようとし、ミセス・ロビンソンは「もう遅いは!」と叫ぶが、エレーンは「私には遅くないわ!」と答え、若い二人は手に手を取って教会を飛び出し、バスに飛び乗る。バスの席に座ると、略奪婚するほどの青春もいつかは色褪せることを暗示するかのように変わり、「サウンド・オブ・サイレンス」が流れる。

354.『42〜世界を変えた男〜』 (原題:42)
2013年、アメリカ映画。監督:ブライアン・ヘルゲランド。
1947年、ブルックリン・ドジャース(ロサンゼルス・ドジャースの前身)のゼネラルマネージャー・ブランチ・リッキー(ハリソン・フォード)は、アフリカ系アメリカ人のジャッキー・ロビンソン(チャドウィック・ボーズマン。20年死亡)を見出し、彼をチームに迎え入れることにした。当時はまだ黒人差別が激しく、メジャーリーグも白人だけのものだったため、二人はファンやマスコミ、チームメイトからも誹謗中傷を浴びせられ、危険球を投げられたりする。孤独な闘いを強いられても自制心を貫き通し、プレーに徹するロンビンソンの姿勢に、やがてチームメイトや観客の意識をも変えていく。
ジャッキーの偉業は米野球界では知らない者がいないほどになり、球界は彼に敬意を評し、背番号42をアメリカ・カナダの全ての野球チームの永久欠番と決定することになった。映画はアフリカ系アメリカ人初のメジャーリーガーとなったジャッキー・ロビンソンを描いたものである。

 永久欠番に絡めて、本映画からの脱線をお許しいただきたいジャガイモの話がある。それはインディアンス傘下の2Aウイリアムスポート・ビルズに所属していたデイブ・ブレスナハン(Roger Philip Bresnahan)捕手のこと。1987年8月31日、この日チームは「ポテト・デー」と銘打ち、ジャガイモを持ってきた観客には入場料を割り引くサービスを行い、多数の観客を集めた。
相手チームの攻撃が2死三塁という場面。投手からきた球を捕手デイブ・ブレスナハンがミットに収めた後、サードに向けて牽制球を投げた。しかしサードの手の届かぬ暴投。走者がホームに帰ろうとしたところ、本物の球で突如タッチ。レフト線に転がっていった物は実は「ジャガイモ」(写真)。もちろんこれは反則で走者はセーフとなったが、スタンドには大受けした。後日監督がブレスナハンに罰金50ドルを命じたところ、50個のジャガイモを持参し、球団を怒らせクビになった。これには抗議が殺到し球団は後日「ブレスナハン・デイ」を開催して、ブレスナハンの背番号59を永久欠番とした。そのセレモニーの挨拶で、「かつてルー・ゲーリッグは、2000試合以上に連続出場して、3割4分以上の打率を残して永久欠番となり、『自分は世界で一番幸せな男だ』と言いましたが、自分はマイナーで2割ちょっとしか打てず、ジャガイモを投げただけで永久欠番になったのだから、世界で一番幸せな男よりも幸せだ!」と語ったという。


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