ポテトエッセイ第105話

夏休み自由研究「デンプン」【ジャガイモ博物館】

*** デンプンのあるものないもの***

 夏休みの時期になると、自由研究でデンプンを調べる子供さんが出て来ます。 コメ、ジャガイモ、サツマイモ、トウモロコシ、カボチャ、ソバ...にはデンプンがありそうだ。ニンジン、トマト、キュウリなどの野菜では、そしてイチゴ、スイカ、リンゴ...はどうでしょう。調べるのは、葉がいいか、実やいもがいいか。
【図:デンプンの構造】
デンプンは、植物の光合成で作られます。デンプンは大変大きな分子で、ブドウ糖(グルコース)が多く集まったものです。(言い換えると、炭水化物(多糖類)であり、多数のα-グルコース分子がグリコシド結合によって重合した天然高分子です。)
太陽の光の下、光合成で得られた物質(糖類、デンプン)は植物内の組織を転流(移動する)とき、分子の小さな糖として移動します。最終的にはまたデンプンにして、コメ、トウモロコシ、ソバは子実、ジャガイモは塊茎、サツマイモは根に蓄えられます。デンプン粒の形状や糊にしたときの特性はこれら起源となった植物の種類によりかなり違っています。ジャガイモから採ったのは片栗粉と、トウモロコシから取り出されたものを特にコーンスターチと呼んでいます。太陽の光の下、二酸化炭素で糖類を作っても、キュウリなどの野菜はデンプンとして蓄えずに、糖類(ブドウ糖、果糖、ショ糖)の状態で存在しています。ジャガイモはブドウ糖からビタミンCをつくったりしています。

 植物細胞にデンプンがあるかどうかはヨウ素液で調べることができます。ジャガイモデンプンは青紫色に呈色する。
 ヨウ素液は、水100mlに 、ヨウ素1gとヨウ素カリウム5gを溶かすとできます。ヨードチンキを水で20倍程度に薄めたものでもよい 。ポピドンヨードの入っているうがい薬を10〜20倍にうすめたもので代用してもよく、イソジンうがい薬でもよい。
 デンプンにヨウ素ヨウ化カリウム(ヨウ素溶液)を加えると、青〜青紫色に呈色します。
デンプン自体がそまるのではなく、デンプンがらせん構造をしているのでそこにヨウ素分子が入り込むことが原因となっています。なお、光合成で二酸化炭素から作られるセルロースはアミロースと同様連続的に結合しますが、らせん構造にならないので、デンプンのような呈色反応は示しません。セルロースの紙は水に溶けません。
 ジャガイモデンプン(片栗粉)ひとつひとつは他のデンプンよりも大きく、(大きくなる途中の小さいものも含みますが、)水を加えて糊化させると透明で粘りが強いのりになります。  デンプンの種類(大きさ)によって染まり方が青だけで無いのは、大きなデンプンにはヨウ素液がたくさん入り込み、小さなデンプンには少ししか入り込まないからです。

○光を当てなかった葉と普通の葉で比較してみる。
○デンプンがない野菜にはなにか共通点があるのか。
○ヨウ素−デンプン反応の青紫色を消す実験をしてみる。

  大きなデンプンを分解して小さな単糖類のブドウ糖や二糖類に変える(切り離す)酵素(アミラーゼまたは旧名のジアスターゼと言います)がいる。それは大根おろし汁で生きているので、大根をおろしてガーゼなどで濾(こ)して、固形分をのぞくといい。薬局のタカジア錠」などを使うには錠剤1、2粒をビニル袋に入れて金槌などで叩いて粉末状にし、約50 mLの水に溶かすとできます。

*ジャガイモからデンプンを取り出す*へ行く

 作物により、デンプンに大小があります。ジャガイモのそれはトウモロコシやサツマイモのそれより大きい。デンプンに水をたらしてスライドグラスの上にのせて、顕微鏡で観察してみよう。ヨウ素液を滴下するためにスポイトがあればいいが、なければスプーンやストローでもいい。

一口メモ:
アミラーゼ:消化酵素であり、デンプンやグリコーゲンを分解する。人の体内では主に、膵臓、唾液腺から分泌されており、またダイコンやカブ、ヤマイモにも多く含まれている。胃腸薬、消化剤として市販もされ、胃もたれや胸焼けの治療、防止に役立っています。 1833年フランスの学者が大麦の芽から取り出したもの。アミラーゼはギリシャ語の「切り離す」を意味する言葉に由来します。
 植物のアミラーゼは果実の成熟や穀物の発芽の間に合成されます。穀物酒や酢、水あめなどをつくるときのデンプンの糖化に麦芽に含まれるアミラーゼが活かされています。
グルコースがつながったのがデンプン。しかしつながり具合の違いによってさらに2種類に分けられる。直鎖状構造をしているアミロースと枝分かれ構造のアミロペクチンからできています(図)。国内のジャガイモデンプンの例ではアミロースが17.4〜22.4%ですが、0ならばモチ種デンプンといいます。

【図チップスの色:6℃で貯蔵したジャガイモと8℃で貯蔵したもの(右)。甘いと焦げの素になる】
b ジャガイモを保管していると、特に低温で貯蔵しているとデンプンがブドウ糖に変わっていきます。「よくねたいも」とか「雪中貯蔵いも」など、長く置いたジャガイモが甘いのはそのためです。そのブドウ糖がジャガイモの汁に多く含まれているかどうかを調べるには糖尿病の尿検査に使うテステープ>試験紙があります。数ミリ幅の紙ですが、これをジャガイモを切って夾んでやるとおよその含有率がわかります。クリニスティクス、チオウレアなどもあります。ブドウ糖の多いジャガイモは揚げ物にむきません。蛋白と一緒に加熱するとカステラのように褐色にコゲてしまい、黄金色に揚がらないためです。ポテチ専用品種はグルコース(ブドウ糖)が少ない。

c デンプンがグルコースになる流れ
 こことで、Aは酵素アミラーゼ、Mはマルターゼの働きを示す。
デンプン(A)→ デキストリン(A) → マルトース(M)→ブドウ糖(グルコース)

 ジャガイモの品種をいろいろ植えているか、手に入るなら、ブドウ糖の多少と揚げたポテトチップスの色との関係を調べてみましょう。
 ジャガイモ品種によりデンプン含有の違いがあります。
 ビーカーに漬物用塩の量(g)をいろいろ変えて溶かしてみて、ジャガイモ品種により沈むものと沈まないものがあることをしらべてみよう。沈むものはデンプンが多いものです。

*とうしてジャガイモにデンプンが入っているのへ行く

*糖の種類 & アクリルアミド へ行く

参考となるWEB:
○ウィキペディア デンプン
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%83%B3%E3%83%97%E3%83%B3 
○デンプンはどうして入っているの
http://potato-museum.jrt.gr.jp/denpuntakusan.html 
○ジャガイモデンプンの特徴
http://potato-museum.jrt.gr.jp/konafustarch.html 
○ヨウ素デンプン反応
http://www2.tokai.or.jp/seed/seed/minna13.htm 


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