ポテトエッセイ第49話

ポン・ヌフ【ジャガイモ博物館】

 わが国のカウチポテト族はチップスが大好きのようですが、パリーっ子はン・ヌフと言うフライドポテトが大好きです。
 このフライドポテトは、昔セーヌ川のポン・ヌフ橋付近の屋台店などで売られていたのですが、今もパリの街角で人気が高いものです。
 ポン・ヌフは「新橋」の意味ですが、実はパリ一番の古い橋で、アンリ四世時代の1603年に落成したものです。アンリ四世がフライドポテトを好んだので、アンリ四世の騎馬像のある橋(写真)にちなんで、フライドポテトをポン・ヌフと呼ぶようになりました。
 揚げポテトの形にはいろいろあって、薄く輪切りしたポテトチップスもその一種です。1cm角の拍子木に切ったものがポム・フリットで、これより少し小ぶりにしたのがポン・ヌフ。さらにもう少し細めがミニョネット(ステック)、もっと細くマッチの棒状にしたのがアリュメット(シューストリング)と呼ばれます。この外、ダイス状のオブラインとか、小粒のパリジェンヌもあります。粉吹きジャガイモのカロリーは御飯の半分ほどで、美容食となりますが、油で揚げたのはカロリーが高まります。欧米の中年女性はわが国の女性に比べ体重の豊かなのが多いのは、脂肪の摂り過ぎに関係あるのかも知れません。
 サマセット・モームの『三人の女』にこんな話がありました。
 太り過ぎで悩む3人の女性が、共に手を取り合って食事療法に励もうということになります。甘いカクテルをコニャックのソ−ダ割りにかえ、バターの量を控えました。3人ともブリッジ遊びが大好きでしたが、ゲームの都合で、もう一人の女性をメンバ−に加えることにしました。ところがこのやせた女性は、3人の目の前でフライドポテトやバタ−付きパンをムシャムシャ食べてました。そしてついに、クリ−ム入りティを飲み始めるに至り、太った3人の我慢の緒が切れ、怒り狂い、泣きわめきだしました。
 やせた女が去った後、狼のように変身して脂肪たっぷりのフォアグラ、クリ−ムで料理した魚、エクレアなどを口にし、ビ−ルを飲みつづました。


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