ポテトエッセイ第118話
ジャガイモを食べると馬鹿になる? 【ジャガイモ博物館】
<2018年8月記入>
次のような話を聞いたことがないでしょうか
1. 『ジャガイモを食べ過ぎると馬鹿になる?』
2. 『ポテトを食うとバカになる?』
3. 『ミョウガを食べると馬鹿になる?』
4. 『米食をすると頭脳が悪くなる?』
5. 『(日本人が)パンを食べると馬鹿になる?』
そんな単純なものではないと思われますが、こんな話が生まれた根拠には興味がありませんか。
1. 『ジャガイモを食べ過ぎると馬鹿になる?』
こんなことを言い出したのはルドルフ・シュタイナーRudolf Steiner(1861〜1925年)と言う哲学者。正しくは、「ジャガイモの食べ過ぎは唯物的物質主義的な浅い思考しかできない人にする」と主張した。「近代の唯物論は、ジャガイモを食べすぎた結果だ」と言いたかったらしい。
シュタイナーは幼い頃から、心霊現象など不思議な神秘体験を繰り返していたが、彼はそれを公にすることなく、学問に励んでおり、ロストック大学に進学し哲学の博士号を取得した。『自由の哲学』『ゲーテ的世界観の認識論要綱』などの本も出しています。そして、霊能力は人間誰しもが持っているものだと直感し、霊的なことについては独自に研究を進めていたという変わった人間だった。日本でも、ゲーテ研究家、人智学の創始者、哲学者、そして教育者として知られ、結構影響を与えている。
ヒトラーやナチスがまだ無名だった時代、その出現と災禍を予告し、「彼らが大きな力を持つとヨーロッパに大変な不幸をもたらす」と予言していた。ヒトラーも博士を危険人物と考え、シュタイナーの暗殺指令を密かに出していたといわれている。
2. 『ポテトを食うとバカになる?』
これを主張している人に従うと、働き盛り世代に当たる45歳未満の人の調査で、トランス脂肪酸を多く摂取していた人ほど、テストの成績は著しく悪かった。トランス脂肪酸の摂取量が1日に1g増えると、正しく思い出せる単語は約0.76単語少なくなったという。このため、フレンチフライの摂取量の多いアメリカでは、揚げる油のトランス脂肪酸を極力下げる努力しているのに日本のM社は植物・牛脂の混合のショートニングを使っている、と。
天然でもその含有率の相対的に高いのが動物性脂。含んでいない植物や魚の油でもその精製過程で僅かに含んでしまうようです。トランス脂肪酸を多く含むことが知られるものとしては、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング、及びそれらを原材料に使ったパン、ケーキ、ドーナツなど洋菓子、揚げ物などがあります。国際機関が生活習慣病予防のために開催した専門家の会合「食事、栄養及び慢性疾患予防に関するWHO/FAO合同専門家会合」では、トランス脂肪酸の摂取量を総エネルギー摂取量の1%未満とするよう勧告しています。トランス脂肪酸を取りすぎた場合、血液中のLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)が増えて、HDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)が減ることが報告されている。日常的にトランス脂肪酸を多く取りすぎている場合、少ない場合と比較して狭心症や心筋梗塞(こうそく)などの冠動脈性心疾患(CHD)のリスクを高めることが示唆されているが、和食中心に生活している人はこのリスクは少ない。
3. 『ミョウガを食べると馬鹿になる?』
落語に「茗荷宿」(みょうがやど)というのがあります。京都と江戸を往復する飛脚が足を怪我し、雨も降ってきたので、「茗荷宿」に泊まることとなります。50両2枚入っている挟み箱を忘れていってくれたらダメで元々と、漬けもの、味噌汁の具、甘酒の中にもミョウガを刻んでいれる。翌朝もミョウガ三昧。ケチな女房残り料理を食べてポーするほど。挟み箱を忘れて旅立ったことを喜んでいるところに飛脚が戻ってきた。忘れ物の挟み箱を受け取ると一目散に走り去った。亭主「何か忘れていった物は無いかね」、女房「あぁ、宿賃もらうのを忘れた」
それほど効用?のある食べものなのか知りたいところだ。ミョウガはショウガと同じ科のものですがまったく違うもの。 ショウガは根(根茎)を、 ミョウガは若芽や花の包(花包)を食べます。
ショウガは、血行促進の作用があることで知られ、漢方でもミョウガは、その香り成分に集中力を増す効果があるとしていることから、落語の話は濡れ衣のようです。
実は、ミョウガの名の由来は『お釈迦様の故事』に由来しているようです。
お釈迦さまの弟子である周利槃特(すりはんどく)仏道に優れ、悟りまで開いた人ですが物忘れをする名人であった。その周利槃特、自分の名前すら覚えられなかったので、名前を書いた札(=名荷)を首からいつも下げていたという。彼が死んだあと、お墓から生えてきた植物があったので、彼がいつも下げていた札にちなんで『ミョウガ』と名付け、彼の墓から生えてきたのだから『食べると馬鹿になる』という話が生まれた...
4. 『米食をすると頭脳が悪くなる?』
1958(昭和33)年、慶應大学医学部教授の林 髞は『頭脳』という本を出版し、「米食をすると頭脳が悪くなる」と主張した。さらに、小麦食品業界は科学者としての彼を活用し「米を食べると馬鹿になる」というパンフレットを作って、彼の講演の場で延べ数十万部も配布していた。
彼は1960(昭和35)年にも「頭の良くなる本」を発行し、パンは白米よりもビタミンB類が多いから頭によい、と唱えて評判になりました。頭脳への効果は判りませんが、日露戦争のおり白米に偏重した食事を続けた陸軍兵士が多数死亡したことは有名なこと。脚気の初期症状は脱力感や集中力低下が見られるので、前から有名でした。B1で勝るパンで脚気のだるさを克服し、勉学がはかどって「林説は本当だった。」と感じる人がいても、おかしくない時代背景でした。教授は木々高太郎という推理小説家でもあり、戦後間もないころ「味の素」で知られたグルタミン酸ソーダをアメリカの有名な雑誌「リーダーズ・ダイジェスト」(Reader’s Digest)の記事を引用しては頭がよくなる薬だとしていたことでも知られていますが、「味の素」社はこれを宣伝活用しなかった。
5. 『(日本人が)パンを食べると馬鹿になる?』
これは4とは真逆の説です。長い農耕食生活環境のなかで、日本人の腸は欧米人のそれと違って長くなってきている。 米とパン(小麦)と比べると、米の方が消化吸収に時間がかかり、その腸を活かすことができる。時間をかけてゆっくり食物から栄養を摂取するは重要だというという考え。パンには短い腸でいいわけで、使わない機関(組織)は退化するから、と言うもの。腸は脳につぐ考える器官なので、完全否定でききるのか、専門家の考えを聞きたいところです。