ジャガイモ品種「メ−クイン」(MAY QUEEN)

(1)来 歴
 出生はナゾに包まれています。ケンブリッジ大学のR.サラマン教授が昭和元年に出版した『ジャガイモ品種』という本によりますと、19世紀末イギリスのチェルトナム(チェトナム,Cheltenhamロンドンの西150kmほど。最近は車のラリーで有名)に近いベンサムBenthamで、サドラーF.Sadlerという人が栽培していたものを1900年にサットン商会Messrs Sutton and Sonsが世間に紹介したものです。
 わが国には大正時代のごく初期に北海道東部の北海道庁立釧路農事試作場に導入され、同試作場の大正8年刊行の事業成績によると大正3年(1914)の成績に記載が残っている。これより少し遅れて、大正6、7年ころ北海道に本州から導入されたようでもあります。(注.参照)
 今日のイギリスでは、省みられないのですが、わが国では、戦後食糧事情が安定したころから徐々に需用が伸びてきました。煮崩が少なく、品質特性に当り外れが少ないので、昭和30年代には主に関西方面で人気が高かったのですが、しだいに全国的に需用がでてき、昭和59年ころそのピークに達しました。
 この品種の普及には厚沢部*農協、帯広大正農協などが貢献しています。*発祥の碑
 名前の由来は、中世の春の村祭り(メーデー)の際、村の娘の中から選ばれる女王にちなんだものです。村人はメイ・ポールMay poleの周りで踊り、メイ・クイーンQueen of the May, May Queenは頭に花や飾りをつけて街を行進しました。なお、固有名詞である品種名「メークイン」「メイクイーン」 と書き替えるのは間違いです。徳島県では「小判形」などと呼んでいます。
メイ・ポール
 北海道の優良品種には「男爵薯」と同じ昭和3年に決まりました。「コナフブキ」、「男爵薯」にはおよばないが、広く栽培されています。道外では、青森、秋田、茨木、長野、熊本、福岡などで栽培されています。
(2)地上部特性
 茎葉枯凋期は「男爵薯」より晩い中生種です。茎は太めで、草丈は「男爵薯」より高く、「農林1号」より短い。茎数は「農林1号」より少なく、草型はやや開いています。小葉は比較的大きい。
花色はヘリオトロープのような紫であり、花弁には白い斑点(しぼり)が散在し、先端部が白い。
 はやや大きく、花柄が長いので、ややにぎやかに見えます。
(3)地下部特性
いもの着き方はやや密ですが、「男爵薯」より疎です。しかし形が長いため、畑で表面が緑化しやすい。形は長卵形ですが、目の多いほうの頭がや膨らみ、少し曲がっています。皮色は淡黄褐で、目は浅く、まゆげがよく発達し、目数はやや少ない。肉色は「キタアカリ」より淡い淡黄です。澱粉価は「男爵薯」より低い。
注 <*「メークインの形」エッセイNo.60>
 ふく枝の離れはよい。いもの肥大速度は中で、収量は「男爵薯」より多い。
(4)調理加工特性
 肉が黄色、上手くつくったものは秋粉質ですが、通常はやや粘質で舌ざわりのよいのが特徴です。
 低温で貯蔵しておくと甘味と粘質を増します。多肥を避けるなど、上手につくって秋食べれば粉質ですが、通常のつくりかたをすれば煮崩れが少なく、通常シチューなどの煮込み、サラダ、カレーライスなどに向きます。
 澱粉価が低く、形が長いため、コロッケには適しません。また、還元糖が多いためフレンチフライなどの油で揚げる料理にも適しません。肉質はやや粘で、水煮時間はやや短くて済みます。形が長いので、剥皮ばれいしょには不向きな品種です。
 和食の煮物などでは判りませんが、えぐみの原因となる、αチャコニン、αソラニンなど、グリコアルカロイドの含有は外側で高く(男爵薯の3倍以上)、肉の中心部にまで見つかる品種です。アメリカではもっと高い「Lenape」と言う品種がありましたが、これが原因で消えております。

(5)栽培上の注意
 すべての疫病菌レースに侵され、初発生が早く、外気温が低冷となってから発病を増す地域では、貯蔵中の腐敗が多くなりやすい。このため、緑化防止をも考慮して、十分に培土できる畦幅を確保し、培土は遅れないようにします。また、疫病の防除は生育の後期まで行うようにします。疫病に弱く、疫病により生育期間が短縮すると、小いもが多くなりやすいので、無農薬栽培が難しい。
 緑化いもは株元から遠いもの(16cm以上)に発生しやすく、また畦幅66cmなどと狭すぎと培土の土が不足で発生が多くなります。ストロン(匐枝)が長く、疎植にするといもが着く位置が少し浅くつく傾向にあります。
 目が浅く、いもの形が長いため、取扱い中に芽が落ちたり、切片が乾き過ぎないように、浴光催芽の期間を20〜25日とやや短くしたり、切片の切り離しを植付直前に行うなどの工夫が要ります。
 株間は密にすると小粒が多くなりやすいので、通常40cm程度にします。小粒いもが特に多くつくところでは、目の多い頂部を切除するなど茎数を抑制するとよいことがあります。
 肥沃土で増収の傾向にありますが、多肥で、しかも茎葉枯凋剤を早期に散布したりしますと、食味が低下しやすいので、十分登熟させてから収穫するのがいい。
【写真は土かけ量不足で緑化したいも】 本品種はアルカロイド含有の高いことが知られていますので、家庭菜園や小学校理科で栽培するときは塊茎の表面の緑化を防ぐため、土かけは十分行い、収穫してみて一部にこの緑化がみられたものは除いてから煮るなどする必要があります。

注. 大正8年刊北海道庁立釧路農事試作場事業成績によると大正3年に試作した成績が記載されている。
北海道農事試験場時報第91号:馬鈴薯「男爵薯」及「メークヰン」の特性と其の栽培上の注意(昭和5年2月)によりますと、試験は渡島支場(現道立道南農試)、桧山農事試作場、釧路農事試作場、根室農事試作場で大正14年〜昭和3年に行われ、また瀬棚農事試作場で昭和2〜3年に行なわれ、昭和3年に渡島・釧路・根室の限定奨励品種となっています。


メークインを原料とした地ビール
 2016年、北海道のJA帯広大正青年部が企画した地ビール「おいものおもい」が売り出されました。試飲されたい方は、帯広空港、帯広市内の飲食店ランチョ・エルパソ、飯の、大地のあきんどなどへどうぞ。



左:「メークイン」のヘリオトロープ色の花。
右:「メークイン」の塊茎。頭部(写真上)が大きく、体が少し曲がっています

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