慶長 3年 1598年 オランダ船がジャワ島に来た(日本には来ていない)
慶長 5年 1600年 オランダ船リーフデ号 豊後に漂着
慶長14年 1609年 オランダ船2隻 平戸に来航
寛永16年 1639年 鎖国令がしかれた
寛永18年 1641年 オランダ商館が長崎の出島に移転(この頃ジャカルタ経由で入ってきたものと思います)
宝永 3年 1706年 現北海道瀬棚町で高田松兵衛が唐鍬で馬鈴薯を栽培
Q2*.ジャガイモを食べると太りますか
北海道産のジャガイモは完熟してから掘り取りますので、ホクホクします。
このため、そんな心配をなさるのでしょうね。ところが、カロリーをみますと、水煮した100gをご飯と比較するとご飯の約半分の73 Kcalほどですから、そのような心配はいりません。
*.「ジャガイモはご飯よりはるかにヘルシー」と言われるのは何故ですか
体の調子を整えるにはビタミンが重要ですが、ジャガイモに含まれる種類が豊富であり、しかも含有率が高いためです。たとえば、ご飯と比べますと、ご飯にほとんど無いビタミンCが10〜20mg(100g当たり)もあり、黄肉種ではビタミンA(カロテン)が含まれています。また、B1は倍、B2やB3は約3倍、ナイアシン(ニコチン酸)はもちろんB6(ピリドキシン)にいたっては野菜の中のトップクラスです。また、悪性貧血などから守る葉酸。さらには、体から塩分を出したり、野菜不足からの突然死を防ぐカリウムをご飯の10倍近く含んでいます。
その上、ご飯は酸性食品ですが、ジャガイモはアルカリ性食品です。
まさに、『美と健康の素』になる奇跡的食べ物ですね。
ジャガイモをご飯と比べると(ビタミン表)へ
ジャガイモに含まれる栄養分は(分析表)へ
ジャガイモは美と健康の源へ
Q3*.エグ味のもとはなんですか(アルカロイド)
ステロイド系アルカロイドの配糖体であるPGA(ポテトグリコアルカロイド)と言うものです。主なものとしては、α-チャコニンとα-ソラニンがあります。
人間の舌の奥の両サイドはこのエグ味に敏感で、皮がグリーンになったものをうっかりそのまま料理しますと、すぐ判ります。このため、体に悪いほど摂ることはありません。塊茎の表面がグリーンなのは未熟なのではなく、取り扱いが悪く、太陽などの光に長時間曝してしまったためにできてしまった葉緑素です。葉緑素と一緒にPGAも増えますので、煮るとエグくなっています。
PGAは、「メークイン」に多く含くまれ、「さやか」、「男爵薯」、「ワセシロ」では少ない傾向にあります。(ポテトエッセイ 45話も参照)。緑の芽(bud)にはPGAがありますが、目(窪み)には特に多く含まれることはありませんので、神経質にえぐりとるのは無駄なことです。
なお、爆光していますと総PGAが増加しますが(「ワセシロ」は増えやすい)、詳しくは「男爵薯」ではα−ソラニンの比率が高まり、「さやか」ではα−チャコニンの比率が高まっていくことも知られています。また、緑化したものを未熟なものと思う女性が多く、「男爵薯」を見慣れた人では「キタアカリ」や「マチルダ」の黄肉を中心部まで均一に緑化しているの勘違いしてクレームをつけてくることもあります。
蛇足になりますが、権威ある?農水省のホームページ「消費者の部屋相談月報」(97年2月)に『太陽光線により、ソラニンがクロロフィルに変化して...』とあり、これらが外にも引用されていますが、間違いです。
http://www.maff.go.jp/soshiki/syokuhin/heya/sou97-2.html
2000年7月20日付け朝日新聞によりますと、18日、神奈川県藤沢専右川小学校(和田健校長、 児童626人)で、6年生の児童20人が学校で栽培した(培土が不十分で、緑化したものを含む?)ジャガイモを皮ごとゆで、塩をつけて88人で食べたところ食中毒の症状を訴えるものがで、うち7人が入院し、翌日までに退院したという。
1999年7月16日の西日本新聞によりますと、福岡市の小学校6年生の生徒が自分たちで栽培したジャガイモを食べて、19人が吐き気や腹痛などを訴え、10人が病院で診察をうけたそうです。未熟いもは光に当たるとアルカロイドが増えやすいので、梅雨前に完熟を待たずに収穫する暖地などでは注意が必要です。
チリ−とかニュージーランドでは、ジャガイモを売るとき、素焼きや木製の壺に入れ、光線から避けているのを見るそうです。
NHKためしてガッテンによりますと(2007年)舌から脳に伝わる速度は、
苦味: 0.62秒
塩味: 0.65秒
酸味: 0.67秒
うま味: 0.93秒
甘味: 1.07秒
辛み: 1.51秒
そして、味を感じる位置は、
苦味やうま味は舌の奥で強く感じる。
甘味は舌先で強く感じる。
酸味は舌の横で強く感じる。
塩味は舌の全体で強く感じる。
辛みは味ではなく痛覚ですが、舌全体で感じる。
Q4*.エグ味は煮ると消えますか
植物に含まれている塩基性窒素化合物はアルカロイドと呼ばれ、ほとんどのものは苦味を呈します。緑茶やコーヒーに含まれているカフェインもそのひとつです。
これらはどれも熱に安定していて、融点が高く(α−ソラニンではカフェインより高い285℃)。気にする必要のないことですが、皮つきでゆでたものより皮むきしてゆでたほうが煮汁への溶出が多い。ソラニンは、お湯にも溶け難いので、煮て消すことはできません。
多量にとった場合の中毒症状としては、腹痛、胃腸障害、虚脱、めまい、眠気、軽度の意識障害などであり、また、抗コリンエステラーゼ作用のあることも知られていて、多量に投与すれば中枢神経系の機能低下をきたすといいます。
しかし、食べて死んだ話はまだ聞いたことがなく、ジャガイモを食べた害の話はコーヒーの飲み過ぎの話より少ないので、普通御家庭では口に入れたときの感じがひどく悪いもので無い限り、心配せずに食べてかまいません。
成人男子が含んでいるとわかる濃度(認知閾)は、食塩0.297%、しょ糖0.496、酢酸0.0181、キニーネ(苦み)0.00104で、苦みには敏感です。したがってジャガイモのえぐ味はすぐわかりますので、「苦い」と言えない幼児などは別として、これで死ぬことはまずありません。
いつも食べている野菜で、アルカロイドを含むものとしは、フキ、フキノトウ、シソ、キュウリ、アスパラガスがありますが、これまでそのえぐみを味わったことがありませんか。
米国の研究で52種類の野菜を調べたところ27種類に発がん性物質が含まれていたそうです。私たちは野菜や果物を通じて、平均毎日1.5グラムの天然農薬を食べており、その量は残留農薬基準に当てはめると、実に1万倍以上になります。
ポテトエッセイ45話ソラニンの話へジャンプ(おすすめ)
Q5*.北海道のジャガイモは何故ホクホクしておいしいのですか
@ジャガイモは冷涼を好み、生育中は気温の高いのを嫌います。北海道の7,8月は気温がこの好みに合い、無駄な体つくりをしないで済みます。自然な生育期間をたっぷり確保できます
A北海道には梅雨がほとんどなく、葉を枯らす『疫病』(えきびょう)などの大敵やアブラムシなどの害虫の発生が少なく、無理のない一生を終えることができます。
B太陽の光と炭酸ガスで葉に蓄えられたエネルギーは、夜、糖分となって地下のジャガイモに移行しますが、夜と昼(ひる)の気温較差(おんどかくさ)が大きいほど、スムーズに移行していき、塊茎に澱粉(でんぷん)として蓄えられます。
Q6*.外国では、ジャガイモをたくさん食べると聞きますが
長い間に、健康にもっともいい食べ物とわかったのでしょうか。アイルランド、ドイツ、ポーランド、スペインなどでは年間100kg以上も食べます。アメリカでは約57kg(1日150g)ですが、日本では約14s(1日40g)しか食べていません。
FAO:2005年によりますと、一人当たり年間消費量は、ベラルーシ338.0、キルギスタン152.2、ロシア142.0、ウクライナ141.6、ラトビア136.1、ポーランド127.8、イギリス114.2、アイルランド106.9、ドイツ73.7、フランス64.1、アメリカ54.4、北朝鮮59.5、
中国39.8、日本24.8sとなっています。FAO 2005統計
Q7*.貯蔵温度はサツマイモと同じでいいですか
家庭で食べるために保管する温度は、サツマイモやしょうが(塊茎)では13〜16℃であるのに対し、ジャガイモではこれより10℃ほど低く3,4℃でいい。休眠期間を過ぎてからは、この温度では芽が伸びてきます。完全に芽を出なくするには2℃に下げなければなりません。このとき湿度を低くすると水みずしさが失われてきます。(萌芽、ほうが)
また、サツマイモは光に当たっていてもかまわないが、ジャガイモでは光に当ててはなりません。当たるとアルカロイドと言うエグ味が少しずつ増えてきます。温度と光に注意し、早めに食べましょう。
小松菜、ほうれんそう、みつばなど緑色のものは、暗い冷蔵庫の中では炭酸同化作用が抑制されます。ところが、サツマイモは根なので光にあてても炭酸同化作用が活発になるといことはありませんので安心です。
しかし、ジャガイモは茎です。このため、葉緑素をつくって、同化作用をしたがり、光の影響が大きい。だから暗くしてやりましょう。また、新陳代謝が活発とはならない低温のほうが呼吸機能も低下してきますので、長期の保存に耐えます。
Q8*.「農林1号」を粉ふきにして、放置しておいたところ肉が黒変しました。
水煮後のいもを放置しておいたものの肉部が黒っぽくなるのは調理後黒変、あるいは水煮後黒変と呼ばれるものです。これは、鉄イオンとクロロゲン酸が反応して第二鉄化合物ができたものです。昔の「蝦夷錦」(えぞにしき)でも多かったものです。
Q9*.「男爵薯」(だんしゃくいも)を生のまますりおろして少しすると褐変してしまうのは何故ですか
ジャガイモの中のクロロゲン酸などのフェノール化合物がポリフェノールオキシダーゼという酵素の働きで酸化しメラニン色素が切断面に近いところに生じたものです。
これを防ぐには、加熱して酵素を働かないようにするといいわけで、pH調整により酵素反応の速度を低下させたりしますが、いもでは水、食塩水またはビタミンC(0.5%液)を添加したりします。「ムサマル」、「ワセシロ」やお好み焼き専用ともいうべき「コナフブキ」では生ですりおろしても褐変が少ない。
ホクレンでは、「男爵薯」のこの欠点を直し、剥皮を容易にするため、この品種の細胞をバラバラにして、そのひとつから「ホワイトバロン」(左図右)を開発しました。
Q10*.いもを切ったら中心部に空洞がありましたが
中心空洞と呼ばれるもので、病原菌は関係していません。高温乾燥の後に大雨がきて急速に肥大したり、マルチ栽培で地温が上がりすぎたり、茎の数が少なくいもの数が少なくて大きくなったりすると出やすい。「男爵薯」、「トヨシロ」、「エニワ」ではよく見られますが、「ワセシロ」、「ホッカイコガネ」、「キタアカリ」などでは発生が少ない。栽培中の異常Uの写真70など参照
『メークインのベークドポテトをお客様に出したら、中心に柿の種のような黒いものがある、との苦情を受けた。こんなものを売るとは何事だ』との話があり、確かめにいったことがありますが、この中心空洞でした。外からは見えないので、「男爵薯」では腐ったものを出したのではないか、との苦情がでます。家庭菜園をやっている方なら、よく知っているので、文句を言わずに、黒褐色部を除いて食べてくれます。
ジャガイモを栽培されている方へ<生理的傷害の防ぎ方>へジャンプ
Q11*.切ったとき中心部が黒くなっているのがあります
パンダとかあんことも呼ばれているもの。これも外から見えないので、苦情の対象となりやすい。栽培中の畑にあるときとか、収穫後通気性の悪いシートをかけているときに、何日か高温に遭遇したりすると発生します。種いもでも、ハウス内の温度が25℃を越えると出てきます。温度が上がって呼吸が盛んになった割には酸素が不足したために出たものです。栽培中の異常 U に写真があります。
市場などで、サツマイモと同じように高い温度のところに置いても発生します。
Q12*.切ったとき、内部に褐色の斑点がありますが
栽培中に土の中で高温や乾燥にあうと発生します。斑点の発生は、概して高温では外側に、乾燥にあうと中心部に多くなります。この他原因のはっきりしないさび状斑点もあります。栽培中の異常Uの写真72,71等を参照。
Q13*.切ったとき、維管束(基部から外側につながっているものが多い)が褐変しています
周皮(最外部)から1cmほどを走る維管束環が淡褐色ないし濃褐色に変色しているものです。これは半身萎凋(いちょう)病などの病気にかかったものの場合と、茎葉の繁茂時期が過ぎて土壌が乾燥しているときに茎葉枯凋剤の散布などで出る場合があります。栽培中の異常Uの写真68を参照。
Q15*.何を新ジャガと言うのですか
「新ジャガとは何を言うのですか」と言った質問を忘れたころ受けることがあります。極めつけは、鹿児島では秋植えされたのは通常その年の12月ころ収穫しますが、これを畑に放置しておいて正月に掘ったものは新ジャガでしょうか、というもの。
結論から言えば、新ジャガの一定の定義はありません。個人、地方、業界でばらばらです。北海道では、越冬ものが底をつき、春植えた親株に着いた肌のきれいなジャガイモを探り掘りしたときに実感する言葉で、6、7月に出回るもので、早い時期は「伯爵=ワセシロ」のことが多い。(追記:2014年8月27日NHK「ためしてガッテン」では北海道の完熟したジャガイモが出て来る主に8〜10月に入手できるものを「新ジャガ」と呼んでいました。)
道外では、3〜5月に出回る鹿児島や島原半島産など暖地産のものを新ジャガとし、みずみずしく、未熟で、皮(正確には周皮と言う)がしっかり付いていない状態で、取り扱いや輸送中にところどろ剥げてしまったようなものを指しています。市場でもこのようなものを呼ぶことが多い。
一方、ポテトチップス業界では、それぞれの産地で、その年初めて収穫した完熟いもを新ジャガと呼んでいます。つまり、ポテトチップス用の「新ジャガ収穫前線」は、5月上旬に南九州を出発し、長崎、広島、6月関東、東北...と日本列島を桜前線のように北上していき、7月に北海道に上陸、8月中旬の道東・道北で終わっています。(『食の科学』1991年10月号種村)
チップス業界などでは、「未熟ジャガ」と「新ジャガ」を区別しています。これは、製品の品質、特にカラーにはっきり差が現れるからです。
「未塾ジャガ」は、でん粉になっていない
グルコース(ぶどう糖)
などの還元糖がまだ多いので、 ポテトチップスなどにすると、この還元糖とアミノ酸などがメイラード反応により製品をカステラ色にし、ゴールドにはならないのです。茎葉が黄変して完熟したものは、還元糖含有が低くなっています。還元糖の含有量を知るには、糖尿の検査に使っているクリニスティックス、テステープ、ウリエースを使うと便利です(一般薬局で扱っている。グルコース(ぶどう糖)の外、ビタミンCも一緒に測定されるものもあります)。 いもを縦切りにして試験紙を挟むか、断面をこすって汁液を出すようにしたのち、試験紙をあて、汁液を吸収させ、10秒後に反応色と標準色(淡赤〜濃紫)を比較すると数値でわかります。
流通販売する側からみても、「未熟ジャガ」は、周皮が剥げやすく、畑や店頭で光に当たるとすぐ緑化しやすく、日もちが悪い。
家庭で、扱う場合、未熟のものは細胞と細胞が強くくっつき、粉の吹き方が少ない。このように葉が青々しているうちに収穫されたものは、ホウレンソウなどの野菜ほどではないが、まだ硝酸態窒素濃度が高い。硝酸態窒素は体内にはいると、亜硝酸塩に変わり、亜硝酸塩はタンパク質と結びついてニトロソアミンという発癌物質を作るとも言われています。食べる量が少ないので気にするほどではないでしょうが、太陽に十分あたって茎葉が黄色みを帯びてから収穫された完熟新ジャガを食べたいものです。
ジャガイモをたくさん食べる国として知られているアイルランドでも、品質の良否はflourly(フラワリー、ほくほく)かどうかであり、季節になるとコーク州あたりの農家の庭先では『New Potatoあり』の看板をそこここで目にするそうです。
注)メイラード反応へ
7月に、北海道で新じゃがとして売っているのは「男爵薯」を改良した色白の「ワセシロ」(伯爵)のことが多い。また、9月、10月になってなって「新じゃがの美味しい時期になりました」と宣伝していることも多い。結局、東大の杉山信男教授の「冬期間貯蔵されたものと、春収穫されたものが、同時期に出回る場合、両者を区別するため、新たに収穫したものに『新』という語をつけられます」あたりに落ち着きましょうか。
新ジャガの話
Q16*.遺伝子組換え(GM)ジャガイモは危険ですか
北海道新聞2011年6月3日に日本学術会議副会長で内閣府食品安全委員会専門委員でもある唐木英明さんは次のようなことを書いていました。
「組み換え作物が世に出て10年以上。今では大豆の68%、トウモロコシの23%が組み換え作物になったが、動物、人間が食べても全く影響が出ていない。遺伝子組み換え大豆を食べたラットが死んだなど「組み換え作物は危険」とするいくつかの研究が、マスコミをにぎわせたことがある。しかし、これらの研究は別の研究者による調査ですべて否定されている。国による厳しい規制が行われており、遺伝子組み換え作物をさらに規制する北海道の条例は、全国に間違ったメッセージを発していると思う。 条例を見ると、一言も「危険」とは書いておらず、「安心のため」としている。危険と書けば科学者から苦情が来るからだが、北海道はいつまで拒否できるのか。食料不足の時代になれば、組み換え作物をやらなければ日本の農業は成り立たない。組み換え作物こそ農薬散布がほとんど不要で、安く、収量も増え、生産者にとってはメリットがある。道条例はそうした農家のチャンスを奪っている。」と。
北海道はクリーンである、とのイメージを高め、風評被害を避けたい気持ちは理解できますが、研究の芽を摘み取り、特許などで遅れをとることを考えても残念なことです。《2011.6.3 追記》
EUはGM作物栽培を禁止しているフランスにその科学的根拠を示すことができないので禁止令は違法である、との裁定を下した。《2011.9 追記》
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狭義の遺伝子組換えジャガイモがアメリカのモンサント社で実用化されています。これは体がテントウムシより少し大きいコロラドハムシという葉を食う虫が嫌うデルタ・エンドトキシンを含むジャガイモを、細胞壁を取り除いてプロトプラストとした後、遺伝子をつないだプラスミドを入れ込む方法で、つくりあげたものなどです。(日本でアメリカから輸入した乾燥ジャガイモ製品にGMが入っているからとリコールをかけたのが原因でアメリカのモンサント社はGM育種を断念している。一方EUは2010年「アムフローラ」を認可しており、BASF社の「フォーチュナ」の認可も近い...2012.1追記)
植物に動物の遺伝子を何個か入れても、ふたつの合いの子のような化け物は絶対に生まれません。自然界でも紫外線とか急な環境の変化とかにより、突然変異という変わりものが生まれ、長い年月をかけて進化もしてきました。遺伝子組換えは、この変化を人間が意識的にやったものですから、食べたときの危険性は、極く普通に食べているものとほとんど変わっていません。
普通の作物では、一つの種の中の品種間の交配により(遺伝子組み換えにより)、別の新しい品種をつくっています。ジャガイモではこの近縁なものの間の外に、もっと縁の遠い種と種の間でも交配に成功することが多い。交配の結果、両親の良いところだけてなく、悪いものだけ受け継いだ子供の系統(品種)達もできます。これら多数の兄弟の中から劣るものを淘汰して、有用なものを選抜してきました。
私は、バイテク技術を駆使した遺伝子組換えを仕事としたことはありませんが、4つの種の遺伝子を取り込んだ「コナフブキ」というジャガイモ品種の育成者のひとりです。これは、現在北海道で、「男爵薯」についで、広く栽培され、「メークイン」よりはるかに多い。これは、自然界には存在しない人造作物(お化け)のひとつとも言えましょうか。
オレンジとカラタチの細胞融合で「オレタチ」でしたが、この「コナフブキ」は交雑による方法の積み重ねでつくられたものです。途中のプロセスは省くとして、この「コナフブキ」の中に交配により、次の異種類の遺伝子が入っております。自然界から見れば、この4元雑種はまさに絶対に生まれない人工お化けです。遺伝子組換えで取り込む遺伝子も普通のジャガイモの遺伝子も素材はDNAです。下記の安全性評価基準によるチェックもありますので、心配いりません。
「コナフブキ」に入っている4つの種は、
Solanum tuberosum (2n=48) 狭義のご存知。ジャガイモ、多収性
S. demissum (2n=72) メキシコ、グアテマラの雑草(疫病とうカビに強い)
S. chacoense (2n=24,36) アルゼンチン、ブラジル..(澱粉が多い)
S. phureja (2n=24) コロンビア、ペルー、ボリビア..(交雑の橋渡し役)
ばれいしょの種間雑種は人類が農耕を始めて以来、突然変異の中から都合のいいものを見つけたり、意識的に交配して改良してものを極端に前進させたものです。
遺伝子組換えで、たとえ微生物とか、動物の遺伝子を取り込むことに成功しても、この「コナブキ」品種以上に、別のお化け生物に変えることはできなかったと思っています。遺伝子操作をしても、その野菜が、ハクサイとカンラン(キャベツ)のハクラン程度に変化する程度であり、植物のDNAいじりで、人類にマイナスの生物がエスケープしたり、チェックをのがれて危険な野菜として市場にでてくる可能性はまず無いでしょう。
少なくても改良の進んでいない品種を植えて、それに農薬を撒いて、病気や虫を防ぐことから比べると、バイテクで、抵抗性の遺伝子の入った減農薬新野菜を食べるほうが、何倍か安全なのです。
味はよく、市場で評判が良いが線虫に弱いA品種に、味は悪いが線虫に抵抗性のあるB品種の害虫抵抗性を導入しよう考えたときに、交配により遺伝子を組換えてBの抵抗性をAに導入した作物は受け入れるが、バイテクで、Bの遺伝子をAに導入して出来た作物は危険、と言うのはおかしな話です。
日本ではコロラドハムシは発生していないので、アメリカの遺伝子組換えジャガイモの遺伝子を必要としていません。しかし、遺伝子組換えは、今後日本でも品種改良のひとつの手段として活用してほしい技術です。昔、ダーウィンは昔神がつくった生物の特性がいろいろ変化するわけはない、と反対されました。また、とげ無しサボテン、より優れたジャガイモなどを育成をしたことで有名なル−サー・バーバンクも「園芸の魔法使い」と言われ、一部の植物学者からさえ、理解してもらえませんせんでした。
遺伝子組換え技術は、人が栽培を始めて以来行われてきた、野生の植物を作物に「品種改良」してきたことの延長にあると私は思っています。どうしても不安な人がいれば、当分表示しておくのも悪くないでしょう。
現在の農水省原案(’99年8月)では、仮にアメリカで遺伝子組み換え100%のものが、冷凍、フラワー(粉)、フレーク、缶詰になって輸入されても『遺伝子組換え』と表示しなくてもよくなった。
遺伝子組み換え安全性チェツク体制
遺伝子組み換えによって、ギリシャ神話に出てくるような頭がライオン、胴体か山羊、尻尾が蛇の怪獣ができるのではないか、と心配しても、そのようなことはおこりません。しかし、1998年英国ロウェット研究所のア−パド・パス゛タイ教授が、開発段階にあるジャガイモ系統をラットに食べさせたところ、免疫力の低下が見られたという報告をしました。このように、遺伝子組み換え食品をめぐってさまざまな危惧からの安全性論争が展開されていて、論争の決着に年月がかかりそうです。卵やコメに含まれる蛋白質は、人によってはアレルギーの原因となります。卵やコメが絶対安全な食べ物かいわれれても、人よっては安全ではありません。遺伝子組換えは、今の時点では、頭ごなしにダメだとも、100%安全だとも言えないでしょう。遺伝子組換えで今の広義のジャガイモにはない耐塩性や耐冷性などの環境ストレス耐性を持たせたり、もっと効率的な光合成をやってより高い収量にしたり、でん粉の質を変えたりすることもできるでしょう。
確かに、遺伝子組換えにより、有害物質ができる可能性はゼロではありません。しかしだからといって、この技術をすべて否定するのは間違っています。通常の交配でも、両親より劣るものがたくさんでます。『コナフブキ』の例でも、3万の兄弟からようやく1つを選んだものです。従来のジャガイモと同質性と考え、人が長期的に食べてどうなるか、などは調べてはいません(外の交雑育種はすべて同じ扱い)。アメリカで普通の交配により生まれたチップス用の『LANAPE』(1967年)と言う品種は、栽培が一般化してからアルカロイドが多くなりやすいことが判り問題になりました。
日本の遺伝子組換えでは、上の例のようなことがあるかどうか開発段階からチェックをして、食の安全性を確保するため、指針(ガイドライン)による現制が行なわています。この規制は、五つの段階の安全性評価試験となっています。
第1段階は科学技術庁の組換えDNA実験指針に基づく実験室・隔離温室での安全評価です。作物から発生する成分や花粉などが、人間の健康に悪い影響引き起こすことがないか、といったとを評価します。
第2段階は非閉鎖系の温室での安全評価です。網室といって外気とつながっているが虫などは入れない場所などでの評価です。花粉などが周りに飛散して影響がでないか、といったことを評価します。これで安全とわかりますと、農水省の利用指針に基づいての次のチエックが行なわれます。
第3段階は隔離圃場での安全性評価です。周辺を林などで囲まれた屋外の圃場での評価で、ここから野外実験になり、環境への影響の評価を行ないます。
第4段階は一般圃場での安全性評価で、作物として栽培することができるかどうかの、最終チェックとなります。
第5段階としては、厚生省の指針に基づき、食品衛生調査員が審査する最後の、食品としての安全性評価をうけ、飼料の安全性に関しては、農水省の資材審議会が評価して、認可することになります。このようにして、道の毒性、長期にわたる微量な摂取が引き起こすとアレルギー病を引き起こす可能性などのチェックが行われます。
厚生省は1991年7月に、「組換えDNA技術応用食品・食品添加物の製造指針」と「同安全性評価指針」の二つの指針をつくりました。その後96年2月に改定指針が告示され、この指針に基づいて96年に、最初の4作物、7品種が認可されました。(省庁名など1996年現在のもの)
また、昔からある(神の創造した)植物とは違うものをつくることに抵抗のある方もいますが、種(species)が違ってもDNAは共通です。チンパンジーと人間の遺伝子の違う部分は共通部分より遙かに少ない。遺伝子組換えをやらなくても、環境の違いで分化して生まれていたかも知れない新作物とも言えましよう。ジャガイモを殺菌剤、殺虫剤、除草剤とか化学肥料を使って栽培するよりも、植物の能力の向上に期待するほうが、人や環境にやさしい。遺伝子組換えはその一部を果たすことになりましょう。100%安全な保証をできる食べ物や技術はあり得ないことを認めて生きていくのがまともでしょう。どのような技術で品種改良するかと、新品種の安全・環境問題の話は別の問題だと思います。
目下のところ(1999年)国産の狭義の遺伝子組換えジャガイモは無く、また、外国からの恐ろしい病害虫の侵入を防ぐため生いもの輸入が禁止されていますので、生いもで「遺伝子組換え」を表示する事態は無いでしょう。このため、仮に100%遺伝子組み換えしたものを原料とした、冷凍フレンチフライ、粉(フラワー)、フレーク、缶詰が入ってきても『遺伝子組換え』と表示しなくてもいいことになっています。遺伝子組換えで生まれた品種を嫌う消費者のために、そのまま使ったり、売ったりするのは勿論原料に使ってもそのことを表示するようにすべきでしょう。
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