82.『三姉妹〜雲南の子』
2012年。中国。監督:王兵(ワン・ビン)。
標高3200mを越え、いつもガスっている中国西南部雲南の高原。その標高のために穀物が収穫できず、ジャガイモが人間と動物の重要な食物となっている。そんなところに母に逃げられ、父は出稼ぎで留守の家があり、幼い三姉妹が住んでいる。長女英英(インイン)が、妹の頭のシラミを一匹一匹潰してやるという繰り返し捉えられる姿は、日本の太平洋戦争末期を思い出さす。80家族しか住んでいない小村であるにもかかわらず、家畜は盗まれるし、家には鍵をかけておかなければ安心して外出できないようなところ。
湿っぽく泥だらけの家で、長女は父恋しさにくずる次女と3女の面倒をみ、羊の世話をし、水汲みから放牧、燃料となる家畜の糞を集めるなど家事をこなし、毎日ジャガイモを食べさせている。そんな三姉妹の姿を捉えたドキュメンタリー。太陽はほとんど上がらず、貧しい。都会に飛び出していったものも似たようなものだが、山の生活はそれなりに安定している。人間に共通の根源的強さを撮っているものと言うべきか。
2012年ベネチア国際映画オリゾンティ部門グランプリ他受賞。
83.『アレクセイと泉』
2014年。監督:本橋成一。 1940年東京都中野区生まれ、炭鉱や魚河岸、上野駅、サーカス、屠場など市井の人々をテーマにした作品を数多く残している。1986年に起こったチェルノブイリ(旧ソ連・現ウクライナ共和国)原発事故の被災地で暮らすナージャらの住む『ナージャの村』を初監督し、ベルリン映画祭を始め、世界各国で好評を博した。その後 数本の映画を撮ったが、音楽家・坂本龍一と組んで、チェルノブイリ原発事故で被災したベラルーシ共和国東南部にある小さな村ブジシチェを舞台にし、〈泉〉を主題としたドキュメンタリーです。
この村の美しい森は、チェルノブイリと同じぐらい汚染されており、 60キュリーから150キュリーの放射能が、検出され、強制制移住として指定された地域だった。しかし、ここでしか暮らせないと55人の老人と1人の青年アレクセイが戻ってきて、小さな泉を中心にほぼ自給自足で暮らしている。この村の学校跡からも、皆で掘るジャガイモ畑からも、森からも、採集されるキノコからも放射能が検出されるが、不思議なことに、この〈泉〉からは検出されない。
「なぜって?それは百年前の水が湧いているからさ」、「あの泉のそばには、神様が立っている」と、村人たちは自慢そうに答える。季節ごとのお祭りはこの泉で行われ、水を汲んだり洗ったりするだけの場所ではなく、村人の心のよりどころになっているのです。ウクライナと言えば、ジャガイモの生産量はドイツよりかなり多く、アメリカと肩を並べているところ。ジャガイモ好きの貴方に、ジャガイモ植えや収穫シーンも見せてくれます。
附.キューリーは放射能の古い単位。1キュリーは370億ベクレル。
84.『ランチの女王』
2002年。日本。テレビドラマ。制作フジテレビ。プロデューサー:山口雅俊、現王園佳正。 2002年7月1日〜9月16日まで毎週月曜日夜放送された。主演は竹内結子。主題歌:THREE DOG NIGHT「Joy To The world」(喜びの世界)」(Amazon)。劇中歌 : 井上陽水「森花処女林」。
ランチが大好きな麦田なつみ(竹内結子)は、洋食屋「キッチンマカロニ」の長男に婚約者のふりをしてくれと頼まれて、家に行きますが、長男がお金を
持ってとんずら。結局なつみは働きながらその家に住む事になる。店は、下宿人牛島ミノル(山田孝之)などの個性豊かないい男たちが、一生懸命に働いている。おいしいものを食べる喜びに満ち溢れ、ささやかな幸せを感じさせる設定だ。
長男健一郎(堤真一)の偽りの婚約者と嘘を抱えているのだが・・・最初は他人として距離をおく鍋島家となつみだが、元彼の修史(森田剛)が現れ・・・なつみの意外な過去を知った上で「家族」としての絆を深めていく。(Wikipedia等)
ある日次男鍋島勇二郎(江口洋介)の書いた注文の紙を電話で、八百屋に注文する際、迷ったあげく、ジャガイモ3箱を誤って30箱注文してしまう。 そのジャガイモでランチを作ることになり、どうしても1000円以内にしたいと頑張るシーンがあり、鍋島勇二郎( 江口洋介)がビシソワーズをつくるハメになります。ホーム・ラブ・コメディー。
85. 『マッサン』
2014年、日本。制作総指揮:櫻井賢。NHK大阪放送局製作で2014年9月29日から2015年3月28日まで放送予定の連続テレビ小説。主題歌 - 中島みゆき「麦の唄」。
竹鶴政孝(NHKドラマではマッサン(玉山鉄二))は1894年(明治27年)、広島県竹原市にある作り酒屋亀山酒造の3男として生まれました。大阪高等工業学校醸造科を卒業後、日本でも本物のウイスキーを作りたいと考えていた摂津酒造に入社。1918年(大正7年)、社命により24歳単身スコットランドのグラスゴー大学に留学します。グラスゴーと言えば川田龍吉が造船技術を学んできたところです。
竹鶴は、ヘイゼルバーン蒸溜所での数カ月に及ぶ実習生活で目覚ましい成果を上げ、ウイスキーづくりへの自信を深めます。そこで柔道を通じて開業医一家と親しくなります。その一家の長女が、後に妻となるリタ(ドラマではエリー:シャーロット・ケイト・フォックス)と親しくなり彼女を連れて貴国します。この国際結婚は日本でも母早苗(泉ピン子)らの大反対にあう。
エリーは日本の生活に溶け込もうと努力を重ね、ご飯炊き、箸使いから始まり漬け物まで手作りした。人々から「日本人以上に日本人らしい」と評された。流暢な関西弁を操るまでになったが「マサタカサン」という発音が難しかったためか、竹鶴のことを「マッサン」と呼びます。
大阪住吉酒造の田中大作(西川きよし)の世話になった後、摂津酒造に勤務。 マッサンは、すぐにでもウイスキー蒸溜所を建設するつもりでしたが、日本経済は大戦終了後の大不況の真っ只中で、摂津酒造も大きな投資をして、長年寝かすウイスキーができる状態ではありませんでした。マッサンは「本格ウイスキーを摂津酒造でつくらないのなら、私が会社に籍をおいて高禄をはむ意味は全くない」と摂津酒造を退社し、文無しに。
マッサンが食堂で働くシーンが2014年11月10日放映"触らぬ神に祟りなし"で 大きなザル一杯の里芋の皮むきをするシーンがありました。
家賃を滞納し、家主にお願いに行く、エリーはそこの娘達の英語教師やら寿屋(現サントリー)の社長鴨居欽次郎(堤友一)を助けての通訳をします。
マッサンはここに入社でき、山崎工場が完成し、子供を産めない体と判った夫婦のもとに新しい家族である養女のエマ(住田萌乃)が来てから4年が経過した1928年(昭和3年)11月、エリーは妻として、そして母として毎日奮闘していた。
ドラマ第13週『急いては事をし損じる』の12月22日のシーンでジャガイモが出て来る。エマには食べ物の好き嫌いがあり、特にニンジンが嫌いでエリーを困らせる。マッサンはエマに甘く、共謀して肉ジャガのニンジンを食べたふりをしてエリーの足を引っ張るシーンがありました。
マッサンの仕事では、工場長補佐となった英一郎(浅香航大)や俊夫(八嶋智人)らと共に、ウイスキーの原酒づくりを順調に進めていた。しかし、鴨居商店も不況で経営が次第に悪化し、今すぐウイスキーを販売するか、製造中止にするべきとの声が社員から挙がり、鴨居は横浜のビール工場の買収に加えて、今あるウイスキー原酒でブレンドするよう指示する。
後日、昭和4年春、日本初の本格ウイスキー「サントリー白札」の誕生に漕ぎつけた。10年の契約期間が過ぎ、まもなく40歳を迎えようとしていた竹鶴政孝は、昭和9年3月に寿屋を退社。同年7月には政孝がウイスキーづくりの理想郷と考えた北海道余市町に「大日本果汁株式会社」を創立し、リンゴジュースや果汁ゼリーを製造してウイスキーができるまでの繋ぎとしました。
昭和15年10月、第1号ウイスキーが出荷されました。初めて自分の手だけで生み出したウイスキーを政孝は、「大日本果汁」を略して「ニッカ(日果)ウヰスキー」と命名。その後、昭和31年に発売された「丸びんウヰスキー(通称丸びんニッキー)」の大ヒットを足掛かりに、同37年の「スーパーニッカ」、38年の「ハイニッカ」と立て続けにヒットを出し、ニッカは全国ブランドへと成長していきます。 竹鶴政孝は北海道余市町、兵庫県西宮市、宮城県仙台市に異なる3つのタイプのウイスキー工場を建設し、理想のウイスキーづくりにこだわつた。昭和54(1979)年8月85歳で亡くなりますが、病床でもウイスキーのグラスを離さなかったと言われています。
86. 『典子は、今』
日本、1981。監督:松山善三、助監督:高峰秀子(演技指導)。(’81、キネマ東京 117分)配役:松原典子:辻典子(少女時代:若命真裕子)、松原春江:渡辺美佐子、春江の夫:長門裕之、その他河原崎長一郎、樫山文枝ら。
昭和37年(1962)1月、サリドマイド胎芽病による薬禍のため、両腕が極端に短い状態で産まれためその両腕を切断され生きてきた典子を、ご本人(辻典子さん)が演じるもの。
6歳の典子が、『三百六十五歩のマーチ』を母と一緒に歌いながら歩く。"しあわせは歩いて来ない だから歩いて行くんだね 一日一歩 三日で三歩 三歩歩いて二歩下がる..."
周囲の理解も得られるようになり、小中高と普通学校の普通学級で過ごせてきた彼女。高校を卒業してからは、26倍の難関を突破して熊本市役所福祉課に就職できました。外からの電話を右足で取って左の耳にあてがい、顎で受話器を押さえると、右足の指で鉛筆を使いメモるなど想像を超える努力を重ねます。
そして台所でカレーライスをつくるシーンもあります。床にビニールを敷き、俎板を置き、右足で大きな包丁を操って丁寧にジャガイモの皮を剥き、細かく刻み、包丁の腹に集めて小ザルの中に入れる。この足の動きに見る人は感動するでしょう。
わが国で生まれたサリドマイド児は昭和37年を頂点に、国が認定した患者は306人でした。
サリドマイドは1960年代初頭西ドイツで多発していた新たな奇形の原因の可能性が極めて高い、と1961年11月西ドイツのレンツ博士により警告が出された。これを受けてアメリカではその製造販売は禁止したので一人も生まれませんでした。
しかし我が国の厚生省は、レンツ警告には「科学的根拠がない」という見解をだした。薬は回収さず、各製薬会社はサリドマイド剤の販売を継続させました。そしてなんと歴代製薬課長はそれぞれ山之内製薬、中外製薬 、 藤沢薬品工業に天下りしていた。
終盤に熊本から広島の友人宅へ初めての一人旅シーン。体に障害のある身では気ままにのんびりとはいかない。食事、排便、切符の購入、落とした荷物を拾ってもらうのも、全てに人の助けがいる。一人きりでは何もできない。しかし現実はすべての人が善意を持ち合わせ理解あるわけではない。悪意や無関心もあります。心と体に障害者と健常者がいることを考えさせられます。
87.『遙かなる戦場 』 英題:The Charge of the Light Brigade
1968イギリス。監督:トニー・リチャードソン 。
ウクライナのクリミア半島に2014年3月1日にロシア軍が展開し始め、世界の注目を集めた、。黒海に突き出したこの土地は、これまで多くの戦争の舞台となってきました。
例えば、クリミア戦争(1853-1856年)は黒海沿岸の覇権をかけて、ロシア帝国とオスマン・トルコ、さらにトルコを支援するフランスやイギリスなどヨーロッパ諸国の間で起こった戦争です。
この映画は1850年代のこのクリミア半島に派兵された軽騎兵隊の話です。イギリス軍の総司令官にラグラン(俳優ジョン・ギールグット、John Gielgud)、陸軍司令官にルーカン卿、陸軍軽騎兵旅団長に第7代カーディガン子爵(T.ハワード)が任命された。イギリス軍がバラクラバBalaclavaに着いた時、兵隊たちはコレラや物質不足に悩まされた。しかし、後で触れる予定のカーディガンは自分のヨットで、ぜいたくな生活をしていた。
バラクラバの戦いでは、総司令官ラグランは丘の上に立ち、司令官ルーカンに進撃を命じたが、敵の大砲にまっすぐに突撃することになるので、命令に従いかねていた。ラグランは命令をくり返した。その命令を伝えにノーラン大尉は志願して丘をおりた。ついにルーカンはカーディガンに突撃を命令し、ノーランも騎兵隊に整列した。進撃がはじまり、速度が増してきた時、ノーランは、大声で叫びながら最前線までとび出した。一斉射撃が起り、ノーランは倒れた。彼は突撃進路が間違っていることを伝えようとしたのだった...
一口でまとめると、司令官や将校たちの愚行や兵士が死んでいく中にあって、なお責任をなすり合う愚かさを痛烈に描いたもの。
このホームページでは戦いや責任が誰にあるのかではなく、戦争とファッションについてふれたい。
クリミア半島の国々は、今もジャガイモの一人当たり消費量が非常に多いことで知られています。この戦争でも当然の結果としてジャガイモを運んだ麻袋と傷病兵がたくさん出ることになりました。総指令官ラグラン男爵(FitzRoy Somerset, 1st Baron Raglan)は、この二つを前にして、次のような一石二鳥の解決策を指示しました。麻袋の左右を切り落し、傷病兵が楽に着られる服をつくれ、と。これがゆったりとして着やすいラグラン・スリーブ(raglan sleeve)の元祖となったのです。実はラグラン男爵はナポレオンとのワーテルローの戦い(1815)で負傷し、右腕を失っていました。負傷した兵士の腕でも脱ぎ着がしやすいようにと考案したと言われます。また兵士にとってとって、この袖は肩のあたりが動きやすくなりました。
付記.ラグラン総司令官のでてくる映画としては、上記の外にまだあります。
1.Admiral Nakhimov (1947) 俳優Pavel Gaideburov
2.Susume ryu kihei (1936) 俳優Brandon Hurst
"The Charge of the Light Brigade" - アメリカの原タイトル
3.Balaclava (1928) 俳優J. Fisher White
このクリミア戦争ではまだまだ思わぬものが考え出されました。軽騎兵旅団長カーディガン伯爵が考案したのが今日私どもが普段使うカーデガンがその例。クリミア半島はロシアの南で、冬は寒さが厳しいところ。かぶって着るセーターが必需品。しかし負傷兵にとって、首を通すのが大変。これを見てもっと楽な服の着脱はできないものかと考え、前開き可能な形にしたのが、カーディガン伯爵でした。前開きにして、ボタンで止められるようにしたのが、今あるカーディガン(cardigan)の始まりなのです。
戦争で生まれたファッションと言えば、『トレンチコート』があります。打ち合わせがダブルで、肩に共布の大きなあて布がつき、共布のベルトを締めて着るもの。トレンチtrenchとは「塹壕(ざんごう)」の意味です。そのルーツは第一次世界大戦(1914〜1918年)においてイギリス軍が寒いぬかるみでの戦に対処するために使った軍用コートです。その後、トレンチコートと呼ばれて一般に普及しました。
原型は1900年頃に考案されたようですが、実用性に加え、機能美もあることから1930年代以降冬のファッションの定番の一つに生長しました。ハンフリー・ボガード、アラン・ラッドなどが着用したことからいっそう人気が高まったと言われています。
もうひとつ蛇足をお許しください。クリミア戦争がきっかけでダイナマイトを作ったのがアルフレッド・ノーベル。スウェーデンのノーベルの父の機雷会社は、ロシア帝国から機雷を受注し供給しましたが、機雷代金は、クリミア戦争で敗戦国となったロシア帝国から支払いがなく、破産してしまいます。しかし、この戦争でニトログリセリンの爆発力の知識を得て、ノーベルがダイナマイトのヒントを得ました。これで、巨万の富を作り、死後ノーベル賞の基金の元となりました。
『必要は発明の母』と言う言葉があります。戦争で生まれたものとしては、ライターもあります。塹壕の中は湿度が高い、マッチは湿気つて火がつかなくなります。ラップも火薬などを湿気から守るために考えられ、ティッシュペーパーは、第一次世界大戦中、脱脂綿の代用品として開発された。軍隊の遠征には食料補給が重要であり、缶詰は当初ナポレオンによる要望から使われた。インスタントコーヒーは第二次大戦が終わっから恩恵に浴したが、元をたどればアメリカの軍事用品にたどりつきます。
更なる蛇足。クリミア戦争に関係した映画としては、
映画「白衣の天使」The White Angel(1936,アメリカ。主演ケイ・フランシス)では 看護婦の一隊を以て救護班を組織し、戦地へ派遣された。戦地で彼女は衛生材料その他必需品の欠乏、困難を乗り越え、戦地に偉大なる事業を成し遂げる。しかし彼女の名声に陸軍医務当局は圧迫を加えるが英国皇后が功績を認めてくれる。赤十字の祖たる彼女の苦闘を描いたもの。タイトルがズバリ"Florence Nightingale"の映画はいくつもあります。
この映画で総司令官ラグランをHalliwell Hobbes が演じています。
「進め龍騎兵」(1936アメリカ。19世紀のインド。豪族カーンに駐屯地を襲われ住民共々大虐殺にあった英27龍騎兵隊は、クリミア戦争時にカーンがロシアの要塞にいることを知り、ヴィッカース大尉の独断で600騎をもって復讐戦に挑む話。)
「大列車強盗」(1979イギリス。ビクトリア朝時代の1885年、軍の4つの鍵に守られた金庫を列車に積み厳重警戒態勢でクリミアに運ぶのだが、この中の金塊をショーン・コネリーがやる怪盗と仲間が狙うもの)
兵隊の制服では、女子中・高校生のセーラー服は、その名の通り水兵から採っている。また、現代のフロックコートなどのダブルブレストはポーランドの軽騎兵(ウーラン)の制服が起源と言われている・
88.『天皇の料理番 』
2015年版。4月よりTBS系列(北海道はHBC)で放送され、民放ドラマとし
て
は高い視聴率を得てました。直木賞作家の杉森久英さんの同名小説が原作(集
英文庫,1982)。明治から昭和という激動の時代を生き抜き、宮内省の大膳頭
を務め、天皇家の食事をまかなっていた名料理人秋山徳蔵氏(小説では高浜、
秋山篤蔵。ドラマでは佐藤健)の人生を描いたノンフィクション的物語です。
かって、鎌田敏夫脚本による1980年制作のドラマ「天皇の料理番」もありま
したが、それでは主人公・秋山 篤蔵を堺正章が演じていた。
福井県から信玄袋ひとつ持って東京にででくるが、兄と一緒に入った食堂で
品書きに「新ジャガ」の文字を見つけ、「新ジャガって、何や」と小声で聞く。小粒で小さくて、皮が薄く、つやつやしているものを、丸ごと甘からく煮
ていた。これが好きなことが女中に知られるようになり、顔を見ると「今日も
新ジャガ?」が挨拶になるほど。彼は小粒で、歯触りシックリして粉っぽくな
いのがすきだった。
華族会館(旧・鹿鳴館)の見習いコックとして住み込み、皿洗いキャベツ刻
みくらいが仕事。しかし、ここでジャガイモの皮はダイヤモンドのように散らすのではなく、コマのようにクルクル回して剥き、一度も切れない皮が下に渦
を巻いているのを知る。フランスの古城の隅々にあるシャトーのようにジャガ
イモの切り口が七角になっているポンム・ド・テール・シャトーも知る。より
フランス料理の深さを知りたくなり勉強嫌いが、隠れてフランス語を学ぶよう
になります。
日露戦争の時代のある日、気にくわない上司を叩いて飛び出し、「西洋御料
理 バンザイ軒」で働くことになります。西洋料理といっても"できますもの"
でコロッケ、カツレツ、オムレツにえびフライくらいしかできない店だが小説
によると、
「まあ、あんた、きれいな肌をしているんだねぇ。まるでうでたての新ジャガ
みたいだよ。ちょいと触らせておくれ」などといいながら触られたり、体温器
になって、と店主の妻お梅さんに迫られたりします。
当時日本でたった一人のフランス帰りの西尾益吉を料理長にしている超有名
精養軒にも出入りしていたが、徴兵検査もあり故郷に戻る。幸い背丈が平均よ
り低かったので第一乙種になり、父親から300円だしてもらい、当時としては
珍しい料理の研究のため念願のパリーに向かう。
【写真はノートルダムに近いポンヌフ橋麓のアンリ四世騎馬像】
episode6でパリに来た篤蔵は、兄の大学の指導教授の桐塚尚吾(武田鉄也)
の紹介状を持って、フランス大使粟野慎一郎(郷ひろみ)の元を訪れます。
大使と里見料理長の計らいで、オテル・マジェスティックの見習小僧にあり
つきます。習う身なので手当は安かった。おまけに肌が黄色で小柄なのでシノ
ワ(シナ人)並のジャポネ(日本人)は差別された。一皿にゴチャゴチャのせ
て、床に置き「日本人は床で食べると言うから、そこで食え」と。その後ジャ
ガイモの皮をきれいに剥いていると、コック達が来て、シャトーに切ってみ
ろ、フリットに切ってみろ、と注文をつけるが、それを器用にこなして驚かれ
る。フランスでは、アンリ四世がこれ(フレンチフライ)を好んだので、その騎
馬像のあるセ−ヌ川にかかる一番古いポン・ヌフ橋(意味は新しい橋"にちなみポン・ヌフ又はポム・フリットと呼んでいます。
「ミシュラン年鑑」が出て数年後のころでしたが、一カ所で腕をみがくより、
いろいろ店で働くほうがフランス料理が判る、と考えるにいたった。
その後、料理長がパリの料理組合の組合長を務めているキャフェ・ド・パリ
に転じて給与がアップ、さらに半年してホテル・リッツに移り、150フラン
(当時の50円)に上がった。
足かけ5年パリに居たの後、フランス大使の推挙により天子様(大正天皇)
のお料理番となります。大正3年の宮内庁の採用通知は、『厨司(コックのこ
と)ヲ命ス』、月給75円でした。
食材は衛生面はもちろん、キチッと揃えるのも大切で、ポン・ヌフを例にす
ると、ジャガイモを幅1p弱の四角な棒に切りそろえ、内部は柔らかく、外側
はカリカリに揚げていきます。このため三分の二は無駄になる(杉森の本420
頁)。
episode9。ヨーロッパザリガニはフランス料理のソテ−やスープに使われる
美味なもの。これに代わるものとし、1926年農水省が摩周湖などに移入し、
2006年になって悪者になり、特定外来生物に指定されたウチダザリガニを使う
ことになった。旭川師団の兵士を使ってかき集めてもらい、厨房の大きな器に
入れて置いたザリガニが1夜にして皆無となった事件がおきた。実は盗難では
なく、カニが自力で脱出していた。静かにするため、水道の蛇口に布を巻いて
器にぶら下げていたのを伝って上り脱走していたのが原因で、探したら部屋の
暗い角などに集まっていた。
再婚後関東大震災にあう。家族の安否を確認できない状態なのに被災者への
炊き出しなどを行うシーンもあります。太平洋戦争後は昭和天皇に恥をかかせ
ないよう天皇の料理番としてできることを模索する...58年もの長い間まご
ころをもって使えた料理番人生に終止符を打ったのは1972年のことでした。
フランス料理のジャガイモの代表的切り方を拾うと、
@ ポン・ヌフ 日本名拍子木切り。1cm 角、長さ 6〜7cm ほどに切ったもの。 ポン・ヌフはセーヌ川にかかる橋の名であり、その近くで売られていたフライドポテトの形が由来である。そのためジャガイモだけに使われる呼び方。
A アリュメリット 5mm角で 長さは7cmの棒状に切る 切り方
B ジュリエンヌ 日本で千切りと呼んでいるもの。マッチ棒より細い糸状に切ったもの。 ニンジンやジャガイモに使われることが多い。
C ゴーフレット ジャガイモを薄い格子状にしたもの。
マンドリーヌと言う 機械を使って1回ずつ90度に 回転させて スライスする。
D シャトー ラグビーボール型に切る切り方 長さ8cm位で 少し太めに切る。長さ6cmくらいはアングレースと呼ぶ。
89.『黒星警部の密室捜査 』
2015年6月17日放送。テレビ東京、テレビ北海道。水曜ミステリー9。監督:唐木希浩、脚本:西森英行。原作は折原一著の「模倣密室 黒星警部と七つの密室」 (光文社文庫刊)。
「“私の夫を殺して下さい”主婦二人が企む完全犯罪!密室マニアのお騒が
せ。名警部が暴く熟年夫婦の光と闇!」がテレビの売り文句。
熊谷中央署の黒星光(陣内孝則)刑事は、8件の連続空き巣事件をオランウータンの仕業と推理したりする密室マニアの風変りな独身。強行犯係にもかか
わらず盗みの現場に度々現れては独自の観点で捜査をする、推理小説かぶれの
変わり者。
ある日、一連の空き巣事件と同一犯によるものと見られる事件が発生。電機
メーカー部長の岩城純一(菅原大吉)が自宅 の密室部屋で絶命しているのが見
つかる。刑事課長の赤間源一郎(笹野高史)らは心臓病でペースメーカーを入れていた岩城が犯人の侵入に驚き心不全を起こしたと推測する。一方、黒星は殺人と睨む。
実は、ネイリストの桜田めぐみ(須藤理彩)と客で純一の妻・岩城三枝子(荻野目慶子)は、夫に対する積もり積もった不満を打ち明け合っていた。そのうち、めぐみは三枝子に交換殺人を提案。動機がないから疑われない、と言うわけだ。
岩城三枝子が同窓会へ出掛けてアリバイをつくり、純一を自宅に1人とす
る。めぐみが預かったスペアキーで侵入して、...
あとから判るのだが、純一が生前、勤め先の「帝和電機」で機密情報漏えい
の疑いをかけられていたことを知る。しかし純一は部下の松原俊介(出合正幸)と知っていたのだ。
その出合正幸がスーパーでダンボールに入ったジャガイモ10s(男
爵薯?)をひっくり返すシーンがありました。
90.『メイクイ−ン 』
2012年。韓国ドラマ。MBC / 全38話。演出:ペク・ホミン、イ・ソンジュン、脚本:ソ
ン・ヨンモク。日本では2012年12月24日より。
ジャガイモなら煮くずれしない「メークイン」が一番、と思っている人も結構いるようです。この映画はジャガイモと関係があるのか気になるところです。
1980年代、欲と権力を望むドヒョンは石油探査船の設計図欲しさに仲間のハスクを殺す。ハスクの娘ユジン(子役時代キム・ユジョン、ドラマでは人気あった)も殺されそうになるが、密かに誘拐されホンチョルに預けられた。夫と娘を失い失意のどん底にいたハスクの妻グムヒは傷心のまま、夫を殺したドヒョンの口車に乗せられドヒョンと再婚してしまう。
10年後、ユジンはヘジュ(成人時役ハン・ジヘ。ヒロイン)として育てられ、転校先の学校でチャンヒやサンと出会う。ある日、ヘジュは同級生の母親に会うが、それは自分の実の母グムヒだった…。しかしお互いに気づくはずもなく…
素晴らしい子供達の演技、海や船に熱い想いを抱く若者たちが海洋専門家として成長していく過程も見られる。
ところで、何で『メイクイーン』かと言えば、ヒロインの父親ハスクが、五月に生まれた娘に書いた手紙の中にあった文句『五月の女王』であり、その後ヒロインが作った船にもこの名が付けられたことによります。
ジャガイモと映 画 第2集 (No.16〜27)の内
容
16. 『ソラニン』
17. 『しあわせのパン』
18.『U-900』
19.『ポテチ』
20.『追憶のアイルランド』 I Could Read the Sky
21.『独裁者』または『チャップリンの独裁者』The
Great Dictator
22.『ニーチェの馬』原題 A TORINOI LO (英題The
Turin Horse トリノの馬)
23.『悲しみのミルク』原題 La teta asustada (英題
The Milk of Sorrow)
24.『落穂拾い』原題 Les Glaneurs et la
Glaneuse
25.『戦場のピアニスト』原題 The Pianist
26.『愛を読むひと』 The Reader
27.『じゃがいもシンフォニー』Gamja Simponi、英訳題
『Potato Symphony』
ジャガイモと映 画 第3集 (No.16〜27)の内
容
28.『エリザベス:ゴールデン・エイジ』Elizabeth: The
Golden Age
29.『シェフとギャルソン、リストランテの夜』 Big
Night
30.『エグジット・スピード』 Exit Speed
31.『Hot Potato』やっかいもの(勝手訳)
32.『トイストーリー3』Toy Story 3
33.『海賊大将』 A High Wind in Jamaica
34.『天空の城ラピュタ』
35.『スタンド・バイ・ミー』Stand by Me
36.『幸 福』
37.『JIGSAW デッド・オア・アライブ』DEAD OR
ALIVE 原題: BROKEN
ジャガイモと映 画 第4集 (No.38〜47)の内
容
ジャガイモと映 画 第5集 (No.48〜60)の内
容
ジャガイモと映 画 第6集 (No.48〜60)の内
容
ジャガイモと映 画 第7集 (No.71〜) へ
38.『苦役列車』
39.『お焦げ先生とジャガイモ七つ』
40.『まおゆう魔王勇者』Archenemy and
Hero
41.『アラン』 Man of Aran
42.『SPUD』(ジャガイモ)
43.『ジャガイモ』()
44.『男はつらいよ 寅次郎純情詩集』
45.『ラ・マルセイエーズ』La
46.『Eatrip』(イートリップ)
47.『チスル』(ジャガイモ)
48.『かもめ食堂』
49.『カレーライス』 別 題. Curry Rice
50.『ライスカレー』(テレビドラマ)
51.『黄色いライスカレー』
52.『カレーライスの女たち』 Every Japanese
Woman Cooks Her Own Curry
53.『銀河鉄道の夜』 I carry a ticket of
eternity :Nokto de la Galaktia Fervojo
54.『わたし出すわ』
55.『いもと男爵と蒸気自動車』 (テレビドラマ)
56.『ブリキの太鼓』 Die Blechtrommel、英訳:
The Tin Drum
57.『Uボート』 Das Boot、英題:The
Boat
58.『スーパーサイズミー』 Super Size Me
59.『「私たち結婚しました』
60.『地下鉄のザジ』
61.『鉄道員(ぽっぽや)』
62.『ドラゴンボールZ 神と神』 (Dragon Ball Z:
Battle of Gods)
63.『刑事コロンボ』指輪の爪あと 原題:Columbo
64.『Faith Like Potatoes』 勝手訳:ジャガイモ
のような信頼
65.『羊たちの沈黙』 原題: THE SILENCE OF
THE LAMBS
66.『ストライクウィッチーズ』 (STRIKE
WITCHES)
67.『アルバート氏の人生』 (Albert
Nobbs)
68.『ジャガイモ星2013QR3』 (ジャガイモ星
)
69.『もったいない!』 (Taste the
Waste)
70.『アニメ・嵐を呼ぶ園児クレヨンしんちゃん』
(クレヨンしんちゃん)
71.『クロスボー作戦』 (原題:Operation
Crossbow)
72.『Down Fall 』 (原題:Der Untergang(失脚、
没落の意))
73.『 赤毛のアン』 (原題:Anne of Green
Gables )
74.『Bienvenue chez les Ch'tis』(Ch'tis達の地に
ようこそ、シュティ(北部の人々)の地へようこそ)
75.『智恵子と光太郎』(極北の愛・運命の出逢い、
智恵子が求めた新しい女の生き方とは...光太郎との美しくも壮絶な愛の物
語)
76.『おおかみこどもの雨と雪』
77.『シルバーレイクの待伏せ』原題:Der
Schatz im Silbersee
78.『風が吹くとき』原題:When the Wind
Blows
79.『進撃の巨人』(アニメ)、映画化の予定あり
80.『この空の花』−長岡花火物語