私が所属している日本いも類研究会にはたくさんのベテランがおります。会員ではありませんが故吉田 稔さんの膨大な成果を基本にして、これに会員間でいろいろ論議を重ねた成果を『じゃがいもMiNi白書』としてまとめ、その中に大方に通用する基本的栽培マニュアルものせています。栽培の基本は大きくかわりませんので、ここでは、それを柱にして書いております。
○種いも
ジャガイモは穀類の種と違って水分含有率が高く、線虫、ウイルス、菌類など重要な病害虫が多いため、専門的知識を持った農家が栽培し、植物防疫所の検査に合格した種子用でなければまともな生産を期待できません。つまり、食用ではなく、合格証票のあるものを選択する必要があります。
種いも更新 | 収量 (%) |
更新 初年目 | 100 |
作り返し1年目 | 85 |
作り返し2年目 | 35 |
○小粒全粒種いもの利点
大きないもを2〜4つに切断して塊茎単位に植えると、ウイルスの判定が容易になるので、原採種栽培で採用されています。しかし小粒全粒種いもをそのまま使うと、切断労力が不要となり、切断に伴う病害伝播の危険性がなくなり、機械植えに適し、植付後に腐敗する恐れが少ないなどのメリットがあります。
○マイクロチューバー(MT)の欠点
マイクロチューバーを一般農家などが使う場合にはあまりおすすめできません。その理由はつぎのようです。
(1)マイクロチユーバーの種いも代が極端に高く、10a当たり20〜30万円と言われています。
(2)ジャガイモの生育初期は種いもの栄養分に頼って生育するため、種いもが小さいほど収量が低下する傾向にあります。
(3)ジャガイモの目の数は、芋の重さを増すにつれて増加しますので、MTの目数が極端に少ない。このため、いも数や収量が劣ってきます。
その対応策として、株間10〜25cmの密植とか2粒播きが行われるが、その分さらに種子代(コスト)が増えます。
(4)いもが小さいため、砕土、覆土の影響をうけやすく、萌芽が不揃いになります。
つまり、出芽しないものや遅れて出てくるものの比率が高く、生育にバラツキが多い。このため、耕起整地、雑草対策、などに周到な管理と手間が必要になります。
(5)出芽後の生育は、弱々しく、しかも茎葉の繁筏が遅れるので、除草回数が増え手間がかかります。
(6)開花、枯凋が遅れ、生育期間が長くなりますので、その間のアブラムシや疫病の防除などに余分な手間と費用がかさむ。
(7)採種栽培では、密植・多肥に過ぎると、塊茎単位で無いことと相まって、ウイルス株等の抜取りを困難にします。
(8)休眠の明けていないものが混ざる可能性もあり、生育のバラツキを生じます。
(9)株当たりいも数が少なく、生産されるいもサイズにバラツキが大きく、正品歩留まりが低い。
(10)収量性(MTの減収率)に品種間差があるので、新品種の場合それが見当がつかないし、すでに判っているのは、緊急増殖の必要のないものです。
なお、マイクロチューバー(MT)活用の利点として、ウイルスフリー化した原原種が得られた後に増殖期間が1年ほど短縮できるとされていますが。これまでMTの助けがなくても、品種決定5後の普及面積は「コナフブキ」で6,052ha、「トヨシロ」4,167haなどとなっているのに対し、MTが関わった品種ではこのように増殖できたものはまだひとつもない。
○浴光育芽(浴光催芽、種いもの余措
2〜4週間程度かけて植付時の芽長が約5mmとなるよう、低温と強光条件下で強い芽を育て、機械にかけても落ちない範囲で出芽促進効果を最大限に発揮させるものです。切断の際芽の動きの悪いものを除けば、いっそう安定した収量が期待できます。
<やり方>
ハウス、納屋などでいもを浴光育芽用ミニコンテナなどに小分けにするか、イネ科桿、シートなどを敷き、3層に広げて十分に光を当てます。
温度は凍結や20℃以上の高温を避ける。ハウス内で行う場合には、採光のみでなく日中は外気温( 5〜20℃)と同程度になるように十分な換気を行う。密閉ハウス内では25℃以上の高温となり「黒色心腐」が発生する。(ハエが活発に飛び回るのは22℃なので、ひとつの目安になります)。
戸外の直射日光の下で最も強い芽が育つが夜は被覆して凍結を防ぐ。少なくとも1週間に1回は上下を撹袢して均一に光を当て、この際に芽の動きの悪いものや萌芽不良のものは取り除くと、マルチの穴あけ作業が楽になり、収量や正品率が高まります。
【関連解説:浴光催芽にはどんな効果があるのへ】
【関連写真:浴光催芽へ】
○耕起整地
耕起は、緑肥や前作物の残さをすき込んだり、土を反転したりするもの。春の作業が重なる場合は、秋起こしが望ましい。小麦や牧草をすき込んだ場合は、分解を促進することが大切です。融雪時に土壌が流れやすい傾斜地では、秋耕を避けたほうがいい。整地は、ていねいに行うといい。
耕起の深さは、25〜30cmぐらいがいいでしょう。
なお、耕ばん層のできやすい畑では、心土破砕などを行って土壌の通気性や透水性を高めておくことが必要です。
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○植付け時期と種いもの位置(深さ)
春作の植付け時期は、こぶしの花が咲いたら植えるとか桜の花見の前に植えるといいと言われます。晩霜害という制約要因はありますが、可能な限り早植えすべきです。
地温が9℃を越える日があり、圃場が乾いて耕起できれば植付けてよく、桜(ソメイヨシノ)が咲くころに出芽していれば上できです。また、多雪地帯では排水施設、秋耕、融雪促進、地温の上りやすい腐植質の多い土作りなどが必要になります。
植付け位置が深すぎると出芽が遅れ、黒あざ病にやられる。通常3〜5cmとし、季節風により表土が飛ばされる地域ではやや深めとし鎮圧をしておく。プランタは深さ、株間が均一になるように調節し、砕土などを上手にやっておくとよい。
【関連解説:家庭の植付時期、萌芽し出芽へ】
○畦(畝)幅
密植ほど多収となりますが、十分な培土ができるよう早生品種で70〜72cm、中晩生品種で72〜75pとし、後のカルチや培土機などとの整合性を保つて傷を少なくするため、特に傾斜地では畦幅の不整に注意することが必要です。
適正畦幅よりも狭いと培土が不十分となり、緑化いもの多発や小粒化を招き、80p以上にすると地力にもよるが、単収の低下や巨大粒の発生を招くことがあります。排水の悪いところの畝は高めにしましょう。
【関連写真:プランタへ】
株間
通常、うね幅72〜75p、株間30pの組み合わせで10aあたり4500〜4800株を整然と植えることにより収量を確保し、株当り茎数の調節により株当りいも数を用途に合わせて適切にすることをねらいます。
さらに、株間をできるだけ一定にすることにより、ねらったサイズの割合を多くできます。株間を種いる栽培のように25p以下にすると小粒化して規格歩留が低下し、準備する種いもの量も増えてしまい、逆に35p以上では減収、巨大粒、変形・中心空洞、褐色心腐、二次生長、でん粉価の低下等の問題を生じます。
○施 肥
ジャガイモの反収は水稲などの10倍ほどもあり、多肥性の作物です。堆厩(きゅう)肥は、土壌の理化学性の改善効果と地力を高めるのに役立ちます。
ジャガイモは、生育後半の肥大期にたくさんの養分を吸収しますので、一部緩効性肥料を入れるとか堆きゅう肥の形態で供給するのが合理的なのですが、植付前に堆きゅう肥を多く使うと澱粉価が低下しホクホクしたものがとれなくなります。このため、前作にやっておくのが望ましい。その年堆厩肥をやる場合は、株間ではなく、予め畑全面にやり、化成肥料は植えるとき溝にやり、レーキなどで少しかき回すような感じで間土するといい。
標準的な地力の圃場では、10aあたり窒素、りん酸、カリの投入量は、それぞれ7s、15s、9s程度で健全に生育して無理なく黄変期を迎えることができると思われますが、前作の茎葉残渣(窒素)の多少、土壌分析の結果をみて各成分量を調整すべきです。多肥に過ぎると茎葉が過繁茂して早くから倒伏してしまい、疫病や軟腐病が出やすくなります。石灰はそうか病の被害を増すことが多いので、酸性の強い畑以外はやらないほうがいい。理想的pHは5.6ぐらいです。おいもゴロゴロと覚えてください。
○芽かき
【関連用語解説:芽かき(用語かいせつ)へ】
○中耕・除草
一般的には、出芽後7〜10日に土の移動、乾燥、覆土による除草を兼ねた中耕を行います。その後、中耕を兼ねた半培土を早めに行うことにより、除草効果だけでなく、地温上昇による生育促進も期待できます。
【関連機械写真:スプレーヤ、ウィーダ、カルチベータへ】
【関連傷害・被害写真:除草剤、黒脚病A4・B34、要素欠乏、葉巻病13、黒あざ病A3、B16、軟腐病、疫病へ】
○培土(土寄せ)
出芽後3週間のいも肥大開始期(茎長は約25p)に、少なくともいもに10pの土が被るようにし(このためには70〜75pの畦幅が必要)、断面がオッパイ〜カマボコ型で山と谷の差が25pになるようにします。土寄せ時期が遅すぎるとストロン(stolon)を傷つけ、茎葉を折損して軟腐病や疫病を伝播させ緑化いもを増します。
培土の高さは25p程度とし、盛り上げる土の量が不足すると、株ぎわが低い富士山型となって、緑化いも、塊茎(疫病)腐敗、褐色心腐、その他の生理障害を受け、収量やでん粉価が低下します。
カマボコ培土機を多湿条件下でやると、壁塗り状になって後にひび割れを生じ、火山礫が多いとか乾燥しやすい時には培土が崩れるという欠点があります。このため、畦間の土を12pの深さまで柔らかくするため、カルチベータをかけるか1週間前に半培土をしておくなどの工夫が必要です。また培土と一緒にナタでり底盤を切り排水をよくしてもいい。
【関連写真:カマボコ培土後の畦へ】
○
培土の効果
(1)気温が30℃を越えても、いもの肥大とでん粉の蓄積に好適な15〜20℃の地温に近く維持できる。
(2)排水良好となり、いもの位置が谷面より上になるために長雨でも腐らない。
(3)皮目肥大が生じないので、そうか病などの被害を抑制することができる。
(4)緑化いもが減少する。
(5)土壌の保水性が高まり、いもが外気の気象変動の影響を受けにくく、褐色心腐、中心空洞、黒色心腐、二次生長などの生理障害が防止できる。
(6)倒伏を防止する。
(7)株ぎわまで十分に盛り上げることにより除草効果がある。
(8)培土内に根が充満して根圏が拡大し、いもの順調な生育を助ける。
(9)黒あざ病による小粒緑化いも、割れいも、変形いもなどが抑制できる。
(10)>収穫作業がし易く、切り傷や皮むけや打傷発生を防止できる。
○野良いも退治(volunteersの処分)
収穫の際、良い芋だけを収穫して、緑化いも・小粒いも・虫害のあるいもなどを放置しておくと、翌年にはそれから芽を出して野良いもになり、作物の生育を阻害し、疫病の発生源になったりします。北海道のような土壌凍結がなく、1月でも土壌凍結しないヨーロッパでは、特に問題になっています。そこでの対策としては、ある程度伸びてから吸収移行型のグリホサート(ラウンドアップ)を3倍に希釈した液を塗布してやるといい。やり方としてはゴム手袋の上に軍手をかぶせてはき、液でぬれたもので触れて歩くといい。外の多年生雑草にも適用していい。
○病害虫防除
一般に多肥の傾向にあることに加え、多肥作物の残効や高い土壌酸度などにより、葉の展開が良すぎて受光率が悪く、生育が軟弱になって疫病や軟腐病が急速に蔓延するケースが多く見受けられます。疫病防除の薬効は顕著で、初発を見逃さなければ多発することはないのですが、軟腐病は種いも伝染ばかりでなく土壌伝染すること、病原体が細菌であることなどから防除効果があがりにくいものです。
北海道では、このほかに菌類病として黒あざ病、粉状そうか病、乾腐病、菌核病、灰色かび病、半身萎凋病、細菌病としてそうか病、黒脚病、青枯病などがありますが、無病種いもの使用、消毒の徹底、適正な輪作の実施により大きな被害は回避できます。
【関連傷害・被害写真:黒脚病A4・B34、要素欠乏、葉巻病13、黒あざ病A3、16、軟腐病、疫病、シラフヒョウタンゾウムシ、ミナミキイロアザミウマ、エゾアオカメムシ、ウイルス病(キャリコ、S、Yなど)、塊茎褐色輪紋病、、ジャガイモシストセンチュウ、半身いちょう病A33・B54、萎凋病35、菌核病、へ】
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○連作・過作はどうしてだめなの
前につくった野菜の病害虫が土の中に残っていたり、前の野菜の根から特殊な成分が残されていたり、野菜が特定の成分を多く吸収して土の栄養分が不均衡になっていたりしていると、ジャガイモの生育が悪くなるからです。
ジャガイモの仲間のいるナス科にはトマト、ピーマン、トウガラシなどがありますが、これらはジャガイモよりも次に栽培するまでの年数を長く必要としています。この外エンドウ、スイカ、ゴボウでは特に注意しましょう。一般に売られている食用ジャガイモにはジャガイモシストセンチュウやそうか病細菌がついていることがあり、これが一度畑に入ると、その駆逐は不可能と言っていい。
○成(完)熟とは
吉田稔によると、(イ)茎葉が黄変し始めて約3週間もすると茎葉の炭水化物、チッ素、リン酸、カリなどの養分の多くが、いもへと移行して形骸化する、(ロ)周皮の層が多くなりコルク質が集積して品種本来の肌を呈する、(ハ)周皮と下層との粘着力を増し皮むけし難くなる、(ニ)でん粉価が品種固有の価に達し、逆に糖分が少くなって食味が良くなる、(ホ)呼吸率が低くなって貯蔵に適した状態になる、(ヘ)ストロンがいもから離れやすくなる。このようなものが成熟したいもであって、こけらの域に達しないものは未熟いもとして、別扱いが必要です。北海道産のものは、貯蔵性の高いこともセールスポイントなので、成熟したものの出回る確率が高いことで知られています。
○収穫から選別まで
収穫は、茎葉の黄変を過ぎ、枯凋期に達した後、約10日して、芋と土が容易に分離する程度に畑が乾いたときをみはからって行います。枯凋後長期間収穫しないで置きますと、芋の表面に黒あざ病の菌核が増えてきます。
収穫はディガで行い、芋表面が乾きしだい人手かピッカで拾うと傷が少なくなります。 大面積になるとハーベスタで行いますが、傷を少なくするため、土の水分に合わせできるだけ第1コンベアで取り込んだ土をクッションとして生かせるよう、揺れや速度を調節し、固いところはゴムのあて物をするなどし、20p以上落下することがないように調整します。
打撲傷は10℃以下で発生しやすいため、収穫作業は10℃以上の条件で行い、低温貯蔵中に選別するときは、いもの温度(品温)を10℃以上に上げてから行えば、打撲傷の発生を押さえることができます。
また、暖地の秋作などでは降雨後に収穫すると、いもの内部の膨圧が高くなっているので、少しの衝撃でもいもに亀裂ができやすくなります。
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○ 収穫以降に発生する傷の種類
(1)切り傷
掘取刃の調節に左右されるが、いもが深い場合や土が固くて培土が浅い場合にも発生する。放置すると傷から侵入した乾腐病・炭そ病、疫病や軟腐病が貯蔵中に発生します。
(2)皮むけ
また周皮が固くついていない未熟いもを収穫した場合にでやすい。固いところにぶつかって周皮がむけたもので商品価値が低下し、呼吸による減耗量を大きくします。
(3)割れ傷
固くて角のあるところにぶつかって割れたり、一部が損傷した傷であり、除去しないと腐敗することがあります。
(4)打撲黒斑(皮下黒斑)
周皮から1p内外の部分が黒変したもので、衝撃を受けて内部にメラニン様の黒色物質が生成されたもの。軽い打撲は1両日後に切ると判るが、強い力を受けた場合変色や割れがゆっくり内部にまで広がっていきます。外観からは判別でき難いため、食用と加工食品用では大きな問題になります。
【関連写真:皮下(打撲)黒斑、爪あと傷、中心空洞、疫病、アントシアン、ピットロットへ】
(5)爪あと傷
ぶつかった時に三日月状で1〜2pの爪を押したような傷ができ、その時にはわからないが4〜10日後に、眼でみえるようになる。でん粉を多く含んだものを低温下で扱うと発生が多い。
(6)押し(圧偏)傷
厚くばら積みした時などに、特にでん粉価の低いものを積み過ぎると下層のものが上の重さでくぼむ。これを減らすため、北海道では2月頃積み換え(くずし)を行っています。【関連写真と解説:打撲、裂開、ラセット粗皮、押し傷、爪あと傷、維管束褐変へ】
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○貯蔵
種子用と青果用はそれぞれ3℃、5℃で貯蔵されるため6ヶ月の長期貯蔵でもあまり萌芽(発芽)しませんが、加工食品用は糖化を避けるために7〜13℃で貯蔵されることから、約3カ月後には発芽(萌芽)し始めるので、貯蔵期間が長くなると油加工を行う業者はリコンディショニング(↓参照)を行って還元糖の低下をはかっています。このため、難糖化性品種の導入とか高比重のものを生産して長期貯蔵耐える原料の供給に努めるのがいい。
貯蔵の流れ
参考までに、原料を集荷した後の貯蔵を述べておきましよう。
第1期(キュアリング)
すでに乾燥を終えたものが持ち込まれたとして、収穫後の取り扱いで生じた傷を温度12〜16℃、湿度約90%の多湿条件で5〜10日程度かけてカルス(治癒組織)を作らせます。(キュアリング処理。キュア(cure)とは傷を癒すという意味)。 大型施設貯蔵の場合、選別やキュアリング(傷の治療)が不十分だと入庫後、2ヶ月頃からの腐敗が問題になります。このため、腐敗の起こらない栽培、傷のつかない収穫と取扱い、腐敗いもの除去とキュアリングを徹底します。
第2期(クーリング)
2〜5週間かけて、次の目的別環境へともっていきます。各期を通じ、緑化を防ぐため、できるだけ光を当てないようにします。 第3期(主貯蔵期)
種いもは3℃でやや乾燥ぎみに、食用は5、6℃湿度80%ほど、油で揚げる加工食品用は7〜13℃、湿度は90〜
95%で本格貯蔵します。
第4期(出庫準備)
種いもの場合には、出庫する10日前ほどから、後の浴光育芽のため徐々に10℃程度に昇温する。加工食品用では、低温貯蔵中に増加した糖分を18℃程度まで昇温させることにより低下させます(リコンディショニング)。
なお、北米では収穫後の塊茎に萌芽抑制剤(クロロプロファムなど。主成分クロロIPC)を使うことが多いが、わが国ではこうしたポストハーベスト・アプリケーションは一切使用していません。
毎年どこかの小学校で、このように緑化したジャガイモを食べて腹痛・吐き気を訴える子供がでます。要注意。